元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ワンダー 君は太陽」

2018-08-04 06:17:20 | 映画の感想(わ行)
 (原題:WONDER)あまりにも御都合主義的な設定とストーリー展開には呆れたが、作劇は工夫されており、キャストの好演もあって鑑賞後の印象はそれほど悪くない。観客のウケも良く、長期の公開になっているのも納得だ。

 ニューヨークで暮らす10歳のオギー・プルマンは、生まれつきのハンディキャップ(トリーチャーコリンズ症候群)によって顔の形が変形しており、何度も手術を受け、長らく療養生活を送っていた。やっと容態が安定したオギーは、初めて学校に通うようになる。しかし、クラスメートたちの偏見の目はかなり厳しく、シビアな現実に打ちのめされて塞ぎ込んでしまう。それでも何人かの友人を得て、家族の支えもあって前向きに努力するようになる。やがてオギーの外観に対して違和感を抱いていた他の生徒も、彼の存在を認めるようになるのだった。R・J・パラシオによる小説の映画化だ。



 オギーは見かけこそ超ユニークだが、もとより性格が良くて頭も良い。そしてポジティヴで勇敢だ。両親は仲が良く、いつも息子を応援している。クラスメートにはイジメっ子もいるが、大半の者は善良である。教師陣も出来た人物ばかり。オギーがピンチに陥っても、誰かがタイミング良く救いの手を差し伸べてくれる。斯様に“都合の良い”設定で、話もいたずらに主人公に重大な試練を与えずにスンナリと進む。

 ただ、それだけの映画だったら退屈極まりない展開になっていたところだが、オギーを取り巻く人物達を独自に掘り下げることによって、作劇に深みが出てきた。具体的にはオギーの高校生の姉であるヴィア、その友人のミランダ、そしてオギーの友人になるジャックの3人だ。

 題名通りオギーは太陽のように人を惹き付けるが、その影に隠れて微妙な屈託を抱いてる者達をクローズアップさせるという作戦には感心した。特に、随分前からプルマン家と交流を持ちながら、自身は家庭環境に恵まれずにヴィアと距離を置くようになったミランダの境遇には同情してしまう。



 スティーヴン・チョボスキーの演出はこれ見よがしなケレンを抑え、ソツがなくスムーズにドラマを進めていく。両親に扮したジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンは、正直大したことは無い。ある程度の演技力があれば、誰でもこなせる役柄だ。それよりも、オギー役のジェイコブ・トレンブレイの芸達者ぶりには感服する。「ルーム」(2015年)に続いて良い仕事をしていると思う。

 脇のキャストでは、ヴィア役のイザベラ・ヴィドヴィッチ、そのボーイフレンドを演じるナジ・ジーター、そしてミランダ役のダニエル・ローズ・ラッセルの3人の若手が要注目だ。これからキャリアを追ってみたくなる魅力がある。ドン・バージェスのカメラによる、透明感のあるニューヨークの情景。マーセロ・ザーヴォスの音楽も良い。

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