前半はコミカルで後半は“泣かせ”に徹するという韓国製娯楽映画の典型みたいなシャシンだが、よく観ると“画期的な”作品であることが分かる。それは、韓国映画でたぶん初めて身体障害者を“本当の意味でポジティヴに”描いているからだ。
アクション俳優志望の脳天気な男子学生である主人公は、後半不慮の事故により片足を失う。当然彼が自暴自棄になる様子は映し出されるが、決して捨て鉢になったり真に厭世的になったりはしない。恋人をはじめとする周囲の献身的なサポートにより前向きに生きることを選ぶ。このプロセスにまったく無理がないことが要注目だ。
序盤にヒロインの父親は寝たきりであることが示されるが、一家に暗い影はない。もちろん実際は多くの苦労があるのだろうが、そんなネガティヴな面は描くに値しないとばかり、ラスト近くに父親が娘の純情を知って不自由な顔の筋肉を緩める感動的なシーンで総括してしまう。
イ・チャンドン監督の「オアシス」なんかを観ても分かる通り、韓国は身障者に対して極端に冷たい国であるという話だ。何しろかつての金大中大統領に対して堂々と差別用語が浴びせられ、それを誰も何とも思わないらしいのだから。その中にあってこのような映画を(多少甘くてファンタジー風であっても)製作した本作の送り手達は、よほど心根が優しくかつスマートなのだろう。
主演のクォン・サンウ(この髪型にはファンはドン引きするかもしれないが ^^;)とキム・ハヌルは息がぴったりで、特にコミカルなシーンでは画面が弾んでくる。幾分冗長とも思える上映時間を忘れさせるパフォーマンスだ(特にカラオケの場面は爆笑)。イ・ハンの演出は堅実で「永遠の片想い」の頃より進歩が見られる。そして、主人公達の子供時代を演じる子役がめっぽういい(^^)。