元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ゴッドファーザー PARTIII」

2009-04-09 06:46:37 | 映画の感想(か行)
 (原題:The Godfather Part 3)90年作品。やはりフランシス・フォード・コッポラという監督は“「ゴッドファーザー」シリーズを生み出した作家”として映画史に残るのかもしれない。

 前作で実の兄を殺さなければならなかったマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の苦悩は大きかった。すでに暗黒街では確固とした地位を築いた彼だが、老境に入った今これまでの罪ほろぼしをするかのように、なんとローマ法皇庁と手を結び、数々の社会活動に手を染める。自分の仕事をなんとか合法化し、ヨーロッパの巨大企業をも傘下に治めようとするまでになった。ところが、第一作で死んだ兄ソニーの私生児ヴィンセント(アンディ・ガルシア)のいるファミリーの下部組織のゴタゴタにつけこんで、本場イタリアのマフィアが介入してくる。それは法皇庁内の勢力争いをも巻き込み、ついにはコルレオーネ一家と、イタリアの政治を左右する影の巨大組織との抗争に発展する。

 当時のコッポラが「ゴッドファーザー」のパート3を撮る気などさらさらなかっただろうことは、彼の映画を観続けてきた者なら、誰だってわかる。しかし、とにかく彼はこの映画を作る必要があった。理由は簡単。コッポラの会社ゾーエトロープが借金600万ドルをかかえて経営危機になり、その返済金を捻出するためだ。しかし、出来上がった作品は、そんな生臭い状況を忘れさせてくれるような力作になっていた。現時点ではこれより後に評価すべき映画は撮っていない。

 公開時に彼が来日したときのインタビューで、“これはオペラですね”という質問に対し、“第一作からオペラとして考えていた。パート3はオペラそのものだ”と答えている。ちなみに物語やキャラクターは、エリザベス朝演劇によるという(キネマ旬報誌より引用)。

 パート3はまさに、イタリア・オペラだ。もちろん、クライマックスがマスカーニの「カヴァリレア・ルスティカーナ」の舞台だからということもある。また、この映画を包み込む仰々しさ、ハッタリのかまし方、悲劇的な結末、そして第一作から共通する暗く深い色調の画面と、おなじみの哀愁に満ちた音楽がオペラ的雰囲気を盛り上げる。

 しかし、この映画が質的に優れているかというと、そうではないと思う。あまりにもご都合主義の人間関係だし、エピソードが多すぎるし、第一、主人公のマイケルは、どうにも自分勝手で人間が薄い。それでもなお、この映画は魅力的である。この力技、この見栄の切り方、こむずかしいことは抜きにしてイッキに観客を引き込んでしまう手法。間違いなく、これもひとつの映画の楽しみ方であろう。ラストシーンは何より、ヴィスコンティの「ベニスに死す」を思わせたりもする。

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