元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「カー・ウォッシュ」

2019-01-04 06:32:52 | 映画の感想(か行)
 (原題:CAR WASH)76年作品。洗車場の一日を追った映画で、何もドラマティックなことは起こらない、淡々としたタッチで進行する。もちろん“何もドラマは無い”というわけではなく、数多い登場人物にはそれぞれの生活やポリシーがあり、時として(個々人にとっての重大な)事件が起きる。ただ、それが映画として面白くなるのかといえば、そうではないのだ。

 ロスアンジェルスの下町にある“デラックス・カー・ウォッシュ”には、経営者のミスターBをはじめとする個性的な従業員が揃っていた。客の方もタクシー代を払わずに女子トイレに身を隠す黒人娘とか、指名手配の爆弾魔と思しき怪しい男とか、成金の牧師とその取り巻きとか、いろいろと賑やかだ。閉店後にも、ミスターBがその日の売り上げを計算しているところに、クビになった店員が腹いせに強盗に入るというハプニングが起きる。



 全体的にそれぞれのエピソードが単発的に並べられるだけで、盛り上がることは無い。たとえば本作と同じような構成であるジョージ・ルーカスの出世作「アメリカン・グラフィティ」(73年)のように、ひとつの大きなテーマに収斂されるような仕掛けは見当たらない。

 しかしながら、全編を覆うディスコ・サウンドの賑々しさには目覚ましいものがある。ローズ・ロイスによるお馴染みのテーマ曲をはじめ、ノーマン・ホイットフィールドが担当したスコアはどれも万全だ。くだんの牧師の助手としてザ・ポインター・シスターズが登場するシーンは、盛り上がりの少ない本作において、唯一画面が華やかになる箇所である。

 キャストはリチャード・プライヤーを除いて印象に残らず。マイケル・シュルツの演出は特筆出来るものはないが、脚本を若き日のジョエル・シュマッカーが担当している点が興味深い。アクションやサスペンス専門と思われる向きもあるが、シールやスマッシング・パンプキンズなどのプロモーションビデオを作成しているなど、音楽関係の仕事もこなしている。そういえば「オペラ座の怪人」(2004年)も彼の作品であった。

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