元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「目指せメタルロード」

2022-06-06 06:19:37 | 映画の感想(ま行)

 (原題:METAL LORDS )2022年4月よりNetflixにて配信。ジャンルとしては私が好きな“学園音楽もの”だが、幾分薄味で興趣には欠ける。もっと突っ込んだディープさを醸し出して欲しかった。とはいえ、作品の雰囲気とキャラクター設定は悪くはないので、あまり深く考えずに画面に対峙していれば退屈せずに約1時間半を過ごすことが出来る。

 オレゴン州ポートランドの高校に通うケヴィンは、体育の授業が免除されるからという理由でマーチングバンドで太鼓を叩いてる冴えない奴。その友人のハンターも、ギターが得意なだけのパッとしない生徒だ。2人には他に友だちもおらず孤立しているように見えるが、実はヘヴィメタルに心酔しており、バンドバトルでトップを取ることを目指している。だが、バンドにはベーシストがいない。そこで目を付けたのがメンタルが危うい女生徒のエミリー。とはいえ彼女が担当しているのはベースではなくチェロなのだが、低音パートならばそう変わらないとばかりに、無理矢理に仲間に引き入れてしまう。

 落ちこぼれ共が頑張って大舞台で活躍するという、絵に描いたようなスポ根のルーティンを踏襲しているものの、訴求力は今ひとつだ。それは主人公たちがメタルが好きでたまらないという、一種狂気的な情念が伝わってこないこと。それぞれ屈託を抱えているにも関わらず、その捌け口が音楽としてダイレクトに伝わってこないもどかしさを感じる。もっと破天荒に、後先考えず突っ走っても良かったのではないか。音楽ネタを取り上げている割には、演奏シーンがそれほど多くないのもマイナスだ。

 しかしながら、クライマックスの“大仕掛け”はハンターの鬱屈していた想いが爆発しているようで、観ていてカタルシスを感じる。使われている楽曲は主にオールドスクールのハードロックなので、若年層よりも私のようなオッサン世代向けだとは言えるが(笑)、それでも観ていて楽しい。

 圧巻は、主人公の“幻想シーン”にアンスラックスのスコット・イアンやメタリカのカーク・ハメット、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ、さらにはジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードといった大物たちが顔を揃えるくだりで、ロックファン以外の観客は何のことか分からないとは思うが、ロック好きにはたまらない場面だ。

 ピーター・ソレットの演出は派手さはないが、堅実にドラマを進めている。ジェイデン・マーテルにアイシス・ヘインズワース、エイドリアン・グリーンスミス、スーフィ・ブラッドショウといった若手中心のキャストはまったく馴染みが無いが、それぞれ良くやっている。それにしても、ケヴィンたちのバンド名が“スカルファッカー”というのは、いくら何でもトバシ過ぎだろう。これで女子のメンバーの加入が実現したのは、まさに奇跡に近い(笑)。
コメント
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