元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「エメラルド・フォレスト」

2022-03-20 06:55:12 | 映画の感想(あ行)
 (原題:The Emerald Forest)84年作品。数々の異色作を世に問うたジョン・ブアマン監督にしては、いささか軽量級の出来映えだ。しかしながら、映像の美しさと画面処理の非凡さは目覚ましい効果を上げ、そのあたりをチェックするだけでも存在価値はある。また、地球環境保護を訴えるというテーマ設定は普遍性があり、違和感なく観ていられる。

 アマゾンの奥地の熱帯雨林でダム建設に従事しているアメリカ人技師ビル・マーカムは、ある日妻子を仕事場に連れて行った際、少し目を離した隙に7歳の息子トミーの姿を見失ってしまう。どうやら、ある部族に連れ去られたらしい。それから10年、ずっと息子の行方を捜していたビルは、幻の部族がトミーの失踪に関わっていることを知り、再びアマゾンのジャングルの奥深くに向かう。



 そこで原住民の襲撃からビルを救ったのが、成長して今やその部族の戦士となったトミーだった。ビルは息子に一緒に帰るように説得するがトミーは受け入れない。そんな時、悪辣な部族がトミーの部族の女たちを拉致して売春宿に売り飛ばすという事件が発生。トミーは彼女たちを奪還すべく、戦いに身を投じる。

 とにかく、映像の喚起力には圧倒される。ジャングルの風景は、まさに極彩色の世界。緑の洪水という感じである。その中を、エメラルドを粉にして身体に塗り、保護色として森林に溶け込むトミーたちが跳梁跋扈する様子は、なかなか見どころがある。そして、トミーが夢の中で大鷹に変身し、ビル群の上空を飛び回り、マンションの上層階にビルの住居を発見して腰蓑一枚の姿で近代的な町並みを走り抜けるというシーンは圧巻で、さすが力のある監督の仕事ぶりだ。なお、撮影監督はフィリップ・ルースロで、彼の持ち味が存分に活かされている。

 しかし、ダム建設による自然破壊というモチーフはまだ良いとして、ストーリー自体は昔のターザン映画とあまり変わらない。活劇のテンポも万全とは言えない。ただ、トミーを演じるチャーリー・ブアマンは監督の息子であり、彼の主演で一本撮りたかったというのが監督の本音だったのではないか(笑)。

 パワーズ・ブースにメグ・フォスター、そして現地人に扮したルイ・ポロナやジラ・パエスらの演技は申し分ない。そしてジュニア・オムリッチとブライアン・ガスコーンによる音楽は実に効果的で、ロックとエスニック・サウンドのリズムを結合させ、独特の世界を創出している。
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