元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「真夜中乙女戦争」

2022-02-20 06:30:32 | 映画の感想(ま行)
 いわゆる“中二病”が炸裂しているような映画で(笑)、酷評も目立つのだが、個人的には気に入った。いくらドラマが絵空事でも、上質のエクステリアと力づくの演出、そして魅力的なキャストさえ用意できれば、かなりの訴求力を獲得するものなのだ。もちろん、成功例は多くはないが、本作はそれがサマになっている稀有なケースである。

 関西から上京して独り暮らしを始めた男子大学生の主人公は、恋人はおろか友人さえも出来ずに捨て鉢な気分で毎日を送っていた。そんな中、ふとした気まぐれで入部した“かくれんぼ同好会”なる怪しげなサークルで、美人で聡明な四年生の先輩に出会い、胸をときめかせる。一方、学内ではボヤ騒ぎが頻発していた。



 主人公は偶然犯人らしき男を目撃して後をつけるが、男は得体のしれない雰囲気と巧みな話術で周囲を煙に巻く“黒服”と呼ばれる、一種の怪人だった。“黒服”と意気投合した主人公は仲間を増やし、数々のイタズラを仕掛けるが、やがてその集まりは主人公の手には負えないテロ組織と化していく。作家Fによる同名小説の映画化だ。

 コミュニケーション能力の低さを棚に上げて“オレはこんなものじゃない。ただ、今は本気出していないだけだ”と勝手に思い込んでいる痛々しい主人公が、思わぬ非日常に遭遇して自身の不甲斐なさを痛感させられるという、大して中身のない話を思いっきり粉飾して強引に観る者に押し付けて納得させようとする、監督(脚本も担当)の二宮健の実力はかなりのものである。

 近作「チワワちゃん」(2019年)でも強く印象付けられた、ケレン味たっぷりの映像処理は今回も健在で、時に目覚ましい美しさを醸し出している。特にラストの構図など、目を見張るしかない。“黒服”の暴走と四年生の先輩のリアリストぶりの板挟みになって翻弄させられる主人公の姿は、いわば自業自得であり同情できない。“黒服”との決着の付け方も呆れるしかないが、これもまた“若気の至り(?)”だと、笑って済ませたくなる。

 主演の永瀬廉は元々ジャニーズ系で、とても大学内で孤立してしまうようなルックスではないが(笑)、内面的表現には非凡なところを見せる。“黒服”の柄本佑は相変わらずの怪演で、臭さ一歩手前の異形を見せつける。先輩役の池田エライザはデビュー時の固さはすっかり取れ、エロ可愛い魅力を存分に振り撒いている。歌唱のシーンも素晴らしい。篠原悠伸に安藤彰則、山口まゆ、渡辺真起子といった脇の面子も悪くない。そして、ビリー・アイリッシュによるエンディング曲も効果的だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする