元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ゴールデン・リバー」

2019-08-03 06:52:22 | 映画の感想(か行)

 (原題:THE SISTERS BROTHERS)何とも要領を得ない映画である。盛り上がる箇所は無いし、モチーフは珍妙だし、ラストに至っては完全に腰砕けだ。何のために撮られたのか、どういう観客を想定して製作したのか、まるで分からない。“ヨーロッパの監督が西部劇を撮ったらどうなるか”というケーススタディにさえ成り得ず、観終わって疲れだけが残る。

 1851年、兄チャーリーと弟イーライによる“シスターズ兄弟”は、凄腕の殺し屋として地元の西海岸オレゴン・カントリーではその名が知れ渡っていた。あるとき“提督”と呼ばれる彼らの雇い主から、連絡係のモリスが見張っているウォームという男を消すように命じられる。

 モリスはカリフォルニアの小さな町ウルフ・クリークで、ウォームと接触することに成功。理想社会の実現を目指すというウォームの意見にモリスが感服している間に、チャーリーとイーライは2人に追いついてくる。実はウォームは科学者で、黄金を作り出す化学式を発見していることを知った“シスターズ兄弟”は、モリスとウォームと組んで黄金を手に入れようとする。しかし、裏切りを知った雇い主は次々と刺客を送り込む。

 邦題およびポスターと惹句から、観る前はてっきり“黄金を手にした4人が、独り占めを狙って仲間割れ。横取りしようとする悪党達も現れて、バイオレンスとアクションが大々的に展開する娯楽編”だと思っていた。ましてや監督は「ディーパンの闘い」(2015年)で往年の任侠映画を“復刻”させたジャック・オーディアールだ。期待しない方がおかしい。ところが出来上がったのは、娯楽映画どころか作家性を前面に出したアーティスティックなものでもない、観ていて閉口するようなシロモノだった。

 そもそも、錬金術を可能にする知識を持った人間を、どうして始末しようとするのか分からない。利用する価値はいくらでもあるだろう。また“黄金を生成する液体”の成分は何で、その材料はどうやって調達したのか不明。何やら劇薬のようで、そのおかげで4人は窮地に陥るのだが、見終わってみれば独り相撲の感が強い。活劇シーンもパッとせず、気勢が上がらないまま迎えたラストは、まさに脱力ものだ。

 ジョン・C・ライリーにホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホールという芸達者を揃えていながら、いずれも精彩が無い。映像面でも目立ったところは見当たらず、居心地の悪い2時間を過ごすハメになった。第75回ヴェネツィア国際映画賞で監督賞を獲得しているらしいが、その理由は見当が付かない。
コメント
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