元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バット★21」

2018-07-08 06:25:20 | 映画の感想(は行)
 (原題:Bat 21)88年作品。特段優れている映画ではないが、観ている間は引き込まれるほどの勢いがある。ヴェトナム戦争をネタにしたシャシンの中では着眼点が良く、また実録物としての重みもある。接して損をすることはない作品だ。

 72年3月。任務遂行中であった米軍戦略空軍のダグラスE8-66は、北ヴェトナム軍の地対空ミサイルによって撃ち落とされとしまう。乗組員の中で生き残ったのは、“バット21”というコードネームを持つハンブルトン中佐だけであった。敵陣の真っただ中に取り残された彼を助けるべく、米空軍戦闘救難チームは早速出撃するが、無線は敵に傍受され妨害される。しかも、翌日になればこの地域一帯では米軍による大規模な爆撃が始まるのだ。



 タイムリミットが迫る中、前線航空統制官のクラーク大尉は無線でハンブルトンとコンタクトを取ることに成功。小型偵察機に乗り上空から敵の動きを探り、逐一ハンブルトンに無線連絡する。ウィリアム・C・アンダーソンによるノンフィクションの映画化だ。

 実話をハンブルトンは無線機に慣れていないにも関わらず、外部と連絡を取れるのが無線しかないために悪戦苦闘する。その設定が面白い。クラークによる上空からの映像と、ハンブルトンが直面する地上戦の実態とのコントラストが見事だ。その2つが互いに交錯し、サスペンスを盛り上げるあたりが上手い。

 それまで互いにコールサインで呼び合っていた2人が、やがて本名を名乗り合うようになるくだりも、観ていて気持ちがいい。

 しかも、米軍将校を主人公にした戦意高揚路線(?)を取っていないことも高ポイントで、食料を拝借した現地住民への謝罪や、ハンブルトンを案内するヴェトナム人少年との交流など、ヒューマニズム的視点を押さえているあたりは好感が持てる。そしてヴェトナム兵を見つめる終盤のハンブルトンの表情など、しっかりと戦争の理不尽さが強調されているのも見上げたものだ。

 ピーター・マークルの演出は、派手さはないが堅実だ。ハンブルトンに扮するジーン・ハックマン、クラークを演じるダニー・グローヴァー、共に良い仕事をしている。クリストファー・ヤングの音楽も悪くない。
コメント
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