元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「約三十の嘘」

2015-02-19 06:28:01 | 映画の感想(や行)
 2004年作品。6人の詐欺師による、ママゴトみたいな“コン・ゲームもどき”に我慢できない人もいるだろうが、私は楽しめた。そもそも「avec mon mari」(99年)や「とらばいゆ」(2000年)の大谷健太郎監督に、本格的ミステリーを期待してはいけない(爆)。

 いかにも当時のこの監督らしい、ユルユルでぬるま湯に浸かったような雰囲気に身を委ね、あまりウケないギャグに“しょうがねぇなあ”と苦笑しつつ、その脱力的作劇の果てにある“面白うて、やがて哀しき人間模様”に想いをはせればオッケーなのだ。



 大阪駅発札幌行きの豪華寝台特急トワイライトエクスプレスに乗り込んだ詐欺師たち。今回のネタは偽物の羽毛布団で、ワンセット30万円の値を付けて500組売り切ろうという計画だ。無事に(?)北海道での仕事を終えて同じく寝台列車で大阪への帰途に就く一行だったが、万全を期すために大金の入ったスーツケースとその鍵を別々の者が持つようにする。ところが好事魔多し、夜が明けるとスーツケースは消えているではないか。果たして金を掠め取ったのは誰なのか。

 主人公たちは一流のペテン師を気取ってはいるが、やっていることは寸借詐欺に毛の生えたようなインチキ商法。ゲットした金は目標額に達しないものの、彼らにとっては大金だ。それが豪華寝台特急の中で紛失する。疑心暗鬼が駆けめぐるが、それでも彼らはチームを解散しない。たぶんカタギの世界で生きてはいけないであろう彼らが、互いの傷をなめながらも、精一杯イキがってみせるあたりは哀れさを誘う。

 でも“これで仕方がないじゃないか”という主人公たちの諦観を生暖かく(笑)見守るというのも、映画の楽しみ方としてまた一興ではないかと思わせる。特に椎名桔平と中谷美紀の、同病相憐れむような関係には納得した。妻夫木聡や田辺誠一も悪くない。

 クレイジーケンバンドの軽快な音楽とカラフルな舞台セットは良好。なお、八嶋智人がその頃の人気番組「トリビアの泉」の司会そのまんまだったのには笑った。
コメント
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