元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「革命の子どもたち」

2014-08-20 06:27:08 | 映画の感想(か行)

 (原題:CHILDREN OF THE REVOLUTION)丁寧に作られたドキュメンタリー映画だとは思うが、題材とアプローチ自体が一般ピープルの価値観と相容れないものであり、どう頑張っても高い評価は得られない。あえて言ってしまえば、この素材を現時点でも取り上げる作者(およびそのシンパ)の思想的背景に突っ込んでみた方が面白いのかもしれない。

 連合赤軍を結成した重信房子とドイツ赤軍の主宰者であったウルリケ・マインホフ、共に60年代末から70年代初頭に掛けて過激派組織を立ち上げてテロ行為を繰り返した“女闘士”たちの姿を、それぞれの娘の立場を通じて浮き彫りにしようとする。監督は、ロンドンを拠点に活動するアイルランド人のドキュメンタリー映画作家シェーン・オサリバン。

 観た印象としては“ロクでもない親を持った子は苦労するものだ”という、身も蓋も無いものである。重信房子の娘のメイも、マインホフの娘のベティーナ・ロールも、親がヤクザ者であったばかりに小さい頃から各地を転々とし、普通の子供らしい体験もさせてもらえなかった。今ではメイもベティーナもカタギの仕事(マスコミ関係)に就いてはいるが、親の素性がそれぞれの職業選択について影響を与えているとはいえ、親が筋者ではなくマトモな一般市民であった方がよっぽど幸せな人生を歩んでいたはずだ。

 劇中では映画監督の足立正生や活動家の塩見孝也、弁護士の大谷恭子といった、かつて過激派の活動に参加あるいは賛同した者にも取材しているが、驚いたことに彼らの口から反省の弁が聞けることはない。たぶん自分たちの狼藉を、今でも正しいことだと思っているのだろう。そしてもちろん、映画は彼らに対して批判的なスタンスを取ってはいない。

 正直言って“だからダメなんだ”と思う。革命家を気取っていても、彼らはならず者で反社会的分子に過ぎない。そもそも、当事者でも無いのにヨソの国にまで“出張”して暴れ回るとは、どういう了見か。このネタを扱う上で唯一合理的な姿勢があるとすれば、これら過激派組織とそれに心酔した者達(多くは団塊世代)を徹底して否定することだ。

 彼らには一分の理も無い。同情出来る余地など毫も存在しない。迂闊に連帯感なんかを覚えるべきものではない。そして、これらゴロツキどもをのさばらせた当時の社会的病理について十分検証することだ。それこそが現在に通じる映画作りと言えるものであろう。ただでさえ、この世代が残した“負の遺産”が暗い影を落としている昨今である。
コメント
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