元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「GODZILLA ゴジラ」

2014-08-09 06:33:14 | 映画の感想(英数)

 (原題:Godzilla)98年に作られたローランド・エメリッヒ監督版よりもかなりマシな仕上がりで、観ている間は退屈しない。しかし、設定や作劇に不十分な箇所も目立つことから、諸手を挙げての高評価は差し控えていただく。

 筋書きにおいて一番驚いたのが、ゴジラとは別の怪獣(ムートー)が出てくることだ。そんなものの存在は公開前における予告編にもチラシにも見当たらず、しかも出番はゴジラよりも多い。これは“看板に偽りあり”ではないのか(爆)。さらに言えば、ムートーの造型はギャオスとカマキラスを足して二で割ったようなもので、さほど芸があるものだとは思えない。まあ、それぞれ形態が違う雄雌2匹を出してくるあたりは工夫の跡が見受けられるが、もうちょっとオリジナリティを前面に出したデザインにして欲しかった。

 東宝版「ゴジラ」を意識してか、芹沢教授が主要登場人物みたいな雰囲気で出てくるのだが、ロクに活躍もしてくれないのには困った。ゴジラとムートーは太古の昔から“犬猿の仲”であることが示されるが、イマイチ両者の生態が分かりかねる。核弾頭をめぐる終盤の展開は段取りが悪く、タイムリミットを設定したサスペンスがまるで出ていない。

 前半での日本を舞台にしたパートでは、ハリウッド名物“えせ日本”が臆面も無く出てくるのも愉快になれない。米海軍の爆発物処理隊員のフォードが主人公ということになっていて、彼の妻子および父親との関係性がドラマの中心になっているのだが、さほどの深みは無い(ハッキリ言って、取って付けたようだ)。

 その分、芹沢教授をクローズアップさせた方が面白くなる可能性はあったが、日本人を画面の真ん中に据えて自在に動かすというのは、ハリウッド関係者にとって至難の業であることも考慮しなければならないだろう。

 とはいえ、今回のゴジラの造型は高得点であり、それだけで特撮ファンを唸らせることが出来る。ただの“巨大トカゲ”だったエメリッヒ版ゴジラとは異なり、CGながら着ぐるみゴジラの特徴を付与させているところは見上げたものだ。トレードマークの叫び声も上手く処理されているし、ちゃんと口から熱線を放射する。

 ギャレス・エドワーズの演出は精度には欠けるもののテンポは良く、グイグイとドラマを引っ張っていく。アーロン・テイラー=ジョンソンをはじめブライアン・クランストン、エリザベス・オルセン、サリー・ホーキンス、デイヴィッド・ストラザーンといったキャストは、可も無く不可も無し。渡辺謙とジュリエット・ビノシュはもうちょっと活躍させて欲しかった。興業面では成功らしく続編も作られるようだが、グダグダになっていった東宝版とは違う骨太な展開を期待したい。
コメント
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