先日、福岡市にあるオーディオショップ「吉田苑」において専門メーカー「Nmode」の新製品の試聴会が開催されていたので、足を運んでみた。
Nmode(エヌモード)は2008年に創立されたニューカマーで、最初にリリースされたプリメインアンプのX-PM1とCDプレーヤーのX-CD1の試聴会にも以前行ったことがあるのだが、今回はその第二弾の商品のデモンストレーションである。
展示機種はX-PM1の実質的な後継機種であるX-PM2Fと上位機種のX-PM10であったが、何よりインパクトがあったのはそれらのアンプではなく、Nmodeのエンジニアが新たに作成した開発用モニタースピーカーだ。まだ世界にワンセットしかないシロモノだが、とにかく音の鮮度がスゴい。驚異的な定位の良さと音場(特に奥行き)の深さ。音像の立ち上がりと立ち下がりのスピードは並大抵のものではなく、ただただ舌を巻くばかり。
キャビネットはジュラルミン製。しかも、スピーカースタンド(置き台)と完全一体化。バスレフダクト(低音が出る穴)は底面に開いているが、もちろんこれも高剛性のジュラルミンで出来ている。ユニットはオーストリアのハイエンドメーカーCONSENSUS AUDIO社のスピーカーに使われているものと同じ製造元(ドイツのTHIEL&PARTNER社)から導入されたものらしく、振動板はセラミックスである。なお、サランネットはないが振動板は卵の殻ほどの強度しかないため、金網でユニットを覆っている。重さはスタンド込みでおよそ60kg。推定の出力音圧レベルは約90dB。インピーダンスは4Ω強とのこと。
残念ながら音色は決して明るくはないのだが、国内大手メーカーのスピーカーみたいな無味乾燥な暗さもなく、物理特性を突き詰めたその果てにあるような清涼な世界を演出している。ちょうど、往年の松下電器(現Panasonic)がTechnicsブランドで展開していたオーディオ機器が最後期に到達した次元にどこか通じるようなものがあると思った。
クラシック、ジャズ、ロック、歌謡曲とあらゆるジャンルを鳴らしてみたが、どれも全く破綻無し。真の意味でオールマイティである。本来モニター用なので自室でリラックスして音楽を楽しむような使い方は向いておらず、したがって私個人はあまり導入したいとは思わないが、スピーカーにしっかり対峙して真剣に聴き込むような使い方をすれば真価を発揮するだろう。
実売するとしたらペア130万円か140万円ぐらいになるかもしれないとメーカー担当者はコメントしていたが、この音でその値段だったら「安い」かもしれない。サウンドマニアならば要チェックの製品であろう。
肝心のアンプのインプレッションだが、それは次回のアーティクルで述べることにする。
(この項つづく)