元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「Eighteen 旋風」

2010-10-03 06:31:45 | 映画の感想(英数)

 (英題:Eighteen)アジアフォーカス福岡国際映画祭2010出品作品。韓国製の青春映画だが、前に紹介した「水辺の物語」と同様のパターンの作品だ。実につまらない。舞台挨拶に出てきた監督(チャン・ゴンジェ)はやはり若く、思い切った作りの映画を期待させつつも、見終わってみれば映画青年の自己満足に終わっている。

 主人公の18歳の男子高校生は、周囲に黙って同い年の恋人と旅行に出掛ける。それに気付いた両方の親は当然のことながら激怒し、二人に対してお互いに会うことを禁止する。だが彼は相手を忘れられない。塾の帰りなどで彼女を待ち伏せたり、勝手にプレゼントを買ったりするのだが、すでに相手の心は彼を離れている。

 要するに一時の気の迷いで男と出歩いたヒロインが、親が本気で心配してるのを目の当たりにして我に返り、すっかり熱が冷めてしまったというありがちなパターンである。それに気が付かずに未練たらたらで彼女に付きまとう主人公の愚かさも、ありがちな図式だ。

 こういう“語るに落ちる”ような話を一編の映画としてまとめ上げるには、撮り方や展開の段取りに細心の注意を払わなければならないはずだが、本作には見事にそれがない。ただ“二人の思い出”を心象風景的にあれやこれやと映し出し、主人公がひたすら懐かしむという、脱力するようなパターンの繰り返しだ。

 これがたとえば、彼の内面と現実とが混濁して異様な次元へと突き抜けるとか、あるいは別の異性を登場させて失意から立ち直るきっかけを掴むとか、そういう“ドラマを動かそう”という方向性を取れば何とか冗長さを回避出来たのかもしれないが、まったくの無為無策では観る方もアクビをかみ殺すのみだ。

 主演のソ・ジュンヨンとイ・ミンジには魅力がない。ルックスも冴えず、ただ脚本通り仕事をやりましたというレベル。デジカムで撮られているせいもあり、映像も表面的でインパクトがない。まるで素人の作品だ。

 ひと頃の韓国映画ブームは廃れたものの、良い映画は確実に存在しているはずだ。それを選んで持ってくるのが映画祭プロデューサーの仕事だが、こういうシャシンを漫然と採用しているあたり、作品を見る目が養われていないようだ。
コメント
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