(原題:JARHEAD)各方面から顰蹙を買っているイラク戦争とは違い、90年代初めの湾岸戦争には“侵略者フセインを撃退するのだ!”という、誰もが納得する大義名分があり、多くの国々が多国籍軍の結成を支持した“正義の戦争”であったはず。にもかかわらずこういう厭戦気分溢れる映画が撮られるという事実は、アメリカ映画の懐の深さを(口惜しいながらも)認めないわけにはいかない。
何よりイラクに赴いた兵士の手記を元にしたディテールの深さが出色。いつ攻めてくるか分からない敵、しかし、主人公達には最後までその姿も見えない。来る日も来る日も訓練に明け暮れ、「地獄の黙示録」の戦闘シーンを見て気合いを入れてはみるものの、重い澱のようなものが心の中に溜まってゆく焦燥感を押し隠すこともできない。
最前線の修羅場でもなく、本国に残された家族の有り様でもない、待機を強いられる“後方部隊”のやるせない日々を通じて戦争の理不尽さや不気味さをジリジリとあぶり出してゆく姿勢は、かなり斬新である。監督サム・メンデスのスタンスは相変わらず一筋縄ではいかない。
ロジャー・ディーキンスのカメラワークは素晴らしく、沙漠の茫洋とした風景および油田火災により黒く染まった砂の大地の描写は今年屈指の映像になるだろう。
最近出番が多くなったジェイク・ギレンホール(けっこうマッチョ ^^;)をはじめピーター・サースガード、クリス・クーパー、ジェイミー・フォックスと曲者を揃えたキャスティングも申し分ない。