「むッ?」
「むむぅ!」
盗まれたクマリング夫人の《白い宝玉》を探し、
名探偵テディチャムズ、
ユキノジョン・H・ワトソン博士が、
虎くんの嗅覚に導かれてやって来たそこには。
「やあ! こんばんは!」
ウサギ!
新年の祝着に装ったウサギくんが、
大きな御屋敷の塀の隙間から、
こちらを見て手を振り、いえ、耳を動かしておりました。
「こ、こんばんは、ウサギくん。
あ、あのぅ、こういうヤツらを、見たことないかい?」
ユキノジョン・H・ワトソン博士が取り出したのは、
容疑者たちの似顔絵でした。
ウサギくん、うんうん、と耳を動かします。
「よく知ってるよ!
ボクと仲間を、ロンドン観光に誘ってくれたジャン=ポールさんと、
マリアンヌさんだ!」
ジャン=ポールとマリアンヌ!
塀の隙間越しに、
驚くユキノジョンと虎くん、
驚いた風もなく悠然と構えるテディちゃムズに、
ウサギくんは説明したのでした――
ボクらは、由緒正しき『3月ウサギ(マーチ・ヘアー)』の一族!
ワイト島の野兎(ヘアー)一家!
島を訪れた観光客の、ジャン=ポールとマリアンヌに誘われ、
大晦日のロンドンを見物に来たんだ!
ピカデリー広場の賑わいは、それはもう華やかで、
大道芸人や屋台も出て、
天下無双の大騒ぎ~♪だと聞かされたのでね。
……でも、ロンドンに来てみたら、
きれいな服を着せてはくれたけど、
街は危険だと言われて、
このお屋敷に閉じ込められてしまった……。
ねえ、見知らぬ御方たち、
ジャン=ポールとマリアンヌを説得して、
ボクらをここから出してくれない?
「やぱりィ!
そういうことォだッたんだなッ!」
ウサギくんの話に、
テディちゃムズは頷き、
ユキノジョン・H・ワトソン博士と虎くんは首を傾げます。
そういうこととは、どういうことなんでしょ?
「ほうせきとうなんじけんはねッ、
みつゆじけんッ、でもあッたのさッ!」
盗難事件は密輸事件!
テディちゃムズ、それはつまりね、と謎解きをしてみせました。
盗まれた《白い宝玉》は、
ウサギたちの晴れ着に縫い付けられてしまえば、
誰もそれをクマリング侯爵家の家宝だとは見抜けないだろう!
従僕のポールことジャン=ポール、
メイドのマリーことマリアンヌは、
ロンドンの代わりにパリ見物だ~などと
言葉巧みに欺いて、
晴れ着を着込んだウサギたちを
ドーバー海峡の彼方へ連れて行く。
海を渡れば、
晴れ着の宝石は取り外され、
パリの悪徳宝石商に売り払われる。
そして、ウサギくんたちは……
「えへんッ、
まことにィ、そのゥ、
もうしあげにくいんだけれどォ~…」
テディちゃムズ、ちょいっと困った様子で。
「ウサギくんたちはァ、
そのゥ、
れすとらんにィ、うりとばされちゃうゥんじゃないかなァ~…」
レストラン?
「いまはァ、
じびえりょうりィのォ、しーずんッ、だからねッ!」
ジビエ料理のシーズン!
野生の動物たちの肉を調理材料とする、
ジビエ料理!
鹿、鴨、野兎たちが、
ローストされちゃったり、
パイにされちゃったり、
スープに塩漬けに――
「ひいい~っ!」
「がるるるる~!」
「うぎゃあああっ!」
白クマ、虎、ウサギが、
それぞれ失神しかけます。
怖ろしや、ジビエ料理!
しかし、悪漢たちには好都合!
《白い宝玉》の密輸と売却、
健康なウサギたちを
『ツゥール・クマジャン』や『クマキシム』など
高級料理店に高値で売りつければ、
まさに一石二鳥の大儲け!
「それだけじゃないィ!
こくさいふんそうにもォ、なッちゃうぞゥ!」
テディちゃムズ、冷静に分析いたします。
ウサギくんたちが住んでいたワイト島は
女王陛下の別荘があるところ。
陛下の領地のウサギを
パリの人々がぱくぱく食べてしまったと世に知れれば、
国際紛争の原因にもなりかねません!
「そ、それは、たいへんだ……!」
「がるー……!」
蒼ざめる友人たちを、
テディちゃムズは見据えます。
「しょくんッ!
こうなッたらァ、しゅだんはァ、ひとつゥ!」
はて?
テディちゃムズの言う手段とは――?
~ つづく ~
「むむぅ!」
盗まれたクマリング夫人の《白い宝玉》を探し、
名探偵テディチャムズ、
ユキノジョン・H・ワトソン博士が、
虎くんの嗅覚に導かれてやって来たそこには。
「やあ! こんばんは!」
ウサギ!
新年の祝着に装ったウサギくんが、
大きな御屋敷の塀の隙間から、
こちらを見て手を振り、いえ、耳を動かしておりました。
「こ、こんばんは、ウサギくん。
あ、あのぅ、こういうヤツらを、見たことないかい?」
ユキノジョン・H・ワトソン博士が取り出したのは、
容疑者たちの似顔絵でした。
ウサギくん、うんうん、と耳を動かします。
「よく知ってるよ!
ボクと仲間を、ロンドン観光に誘ってくれたジャン=ポールさんと、
マリアンヌさんだ!」
ジャン=ポールとマリアンヌ!
塀の隙間越しに、
驚くユキノジョンと虎くん、
驚いた風もなく悠然と構えるテディちゃムズに、
ウサギくんは説明したのでした――
ボクらは、由緒正しき『3月ウサギ(マーチ・ヘアー)』の一族!
ワイト島の野兎(ヘアー)一家!
島を訪れた観光客の、ジャン=ポールとマリアンヌに誘われ、
大晦日のロンドンを見物に来たんだ!
ピカデリー広場の賑わいは、それはもう華やかで、
大道芸人や屋台も出て、
天下無双の大騒ぎ~♪だと聞かされたのでね。
……でも、ロンドンに来てみたら、
きれいな服を着せてはくれたけど、
街は危険だと言われて、
このお屋敷に閉じ込められてしまった……。
ねえ、見知らぬ御方たち、
ジャン=ポールとマリアンヌを説得して、
ボクらをここから出してくれない?
「やぱりィ!
そういうことォだッたんだなッ!」
ウサギくんの話に、
テディちゃムズは頷き、
ユキノジョン・H・ワトソン博士と虎くんは首を傾げます。
そういうこととは、どういうことなんでしょ?
「ほうせきとうなんじけんはねッ、
みつゆじけんッ、でもあッたのさッ!」
盗難事件は密輸事件!
テディちゃムズ、それはつまりね、と謎解きをしてみせました。
盗まれた《白い宝玉》は、
ウサギたちの晴れ着に縫い付けられてしまえば、
誰もそれをクマリング侯爵家の家宝だとは見抜けないだろう!
従僕のポールことジャン=ポール、
メイドのマリーことマリアンヌは、
ロンドンの代わりにパリ見物だ~などと
言葉巧みに欺いて、
晴れ着を着込んだウサギたちを
ドーバー海峡の彼方へ連れて行く。
海を渡れば、
晴れ着の宝石は取り外され、
パリの悪徳宝石商に売り払われる。
そして、ウサギくんたちは……
「えへんッ、
まことにィ、そのゥ、
もうしあげにくいんだけれどォ~…」
テディちゃムズ、ちょいっと困った様子で。
「ウサギくんたちはァ、
そのゥ、
れすとらんにィ、うりとばされちゃうゥんじゃないかなァ~…」
レストラン?
「いまはァ、
じびえりょうりィのォ、しーずんッ、だからねッ!」
ジビエ料理のシーズン!
野生の動物たちの肉を調理材料とする、
ジビエ料理!
鹿、鴨、野兎たちが、
ローストされちゃったり、
パイにされちゃったり、
スープに塩漬けに――
「ひいい~っ!」
「がるるるる~!」
「うぎゃあああっ!」
白クマ、虎、ウサギが、
それぞれ失神しかけます。
怖ろしや、ジビエ料理!
しかし、悪漢たちには好都合!
《白い宝玉》の密輸と売却、
健康なウサギたちを
『ツゥール・クマジャン』や『クマキシム』など
高級料理店に高値で売りつければ、
まさに一石二鳥の大儲け!
「それだけじゃないィ!
こくさいふんそうにもォ、なッちゃうぞゥ!」
テディちゃムズ、冷静に分析いたします。
ウサギくんたちが住んでいたワイト島は
女王陛下の別荘があるところ。
陛下の領地のウサギを
パリの人々がぱくぱく食べてしまったと世に知れれば、
国際紛争の原因にもなりかねません!
「そ、それは、たいへんだ……!」
「がるー……!」
蒼ざめる友人たちを、
テディちゃムズは見据えます。
「しょくんッ!
こうなッたらァ、しゅだんはァ、ひとつゥ!」
はて?
テディちゃムズの言う手段とは――?
~ つづく ~
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