「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

「ライフ・イズ・ミラクル」

2005-07-16 | 映画
初日に映画「ライフ・イズ・ミラクル」を観てきました。フランスとセルビア・モンテネグロの合作映画です。

詳細はオフィシャルサイトを見ていただければと思いますが、1992年、ボスニア紛争勃発の年、国境近くのボスニアの村が舞台です。鉄道建設のために働くセルビア人技師が主人公。ある日、技師の息子が兵役へ行くことになり、敵であるムスリム側の捕虜になってしまう。そんなとき、ムスリム人女性を村人が連れてきて人質交換に使うよう仕向けるのですが、主人公とこの女性が恋に落ちてしまう。さてさてこの恋の行方は? 息子は無事に帰還できるのか…

なんとなーく暗そうでしょ? ボスニア紛争に民族を超えた恋(そもそも不倫ですし)、人質交換などなど。ところが、全然暗くない。それどころか、すぽっと突き抜けたような明るさが全編、貫かれています。生命のもつ力強さをおおらかに、伸びやかに描いている。見終わると「ああ、生きているって、なんだかんだあるけどいいなあ」と自然と笑みがこぼれます。勇気づけられます。

確かにテーマは暗いんです。戦争は自分たちと関係ないもの、テレビの中の出来事と思っていた主人公たちがまさに当事者となっていく様子は、戦争というものが起きるときの庶民の様子としてリアリティを感じます。戦争を儲けのネタに利用しようとする権力の姿をおちょくりながらも描きます。死が身近に迫る状況も。

でも、そんな社会のことなんかより、日々を暮らしていくこと、特に恋をすることって、普通に生活している人間にはより当たり前でより重要な現実なんです。だから向き合うときの力強さが違う。主人公の男女の性の営みは、あっけらかんとしている上にはち切れんばかりの生命力を誇示します。息子が捕虜になっているという現実はその瞬間、はるか彼方の世界に遠のきます。ただ、現実社会の側は「彼方」に行こうとする主人公たちをいろいろな形で(ネタばれってぽくなるので詳細は書きません)引き戻すんですけどね。それがまた、生きるための新たな力を生み出す。本人たちは全然肩肘張らない自然な形で「次」に向かうんだけど、その力強さが魅力です。

全編に動物がいろいろな形でスパイスのごとく登場します。特にロバはキーパーソン(?)。最後、「現実」に屈するように絶望に身を委ねようとする主人公にある出来事がおきるんですが、これもロバがらみです。あと、ネコの撮影はどうやってしたんだろうという違う関心も。なにはともあれ、後味の良い映画でした。