「オレの愛しい王子様」第12話 首謀者
「無事か、創真」 翼は横たわった男にサバイバルナイフを突きつけたまま、ちらりと振り返った。大丈夫だと創真が答えると、安堵したようにほっと息をついていたが、すぐさま表情を引きしめて男...
「オレの愛しい王子様」第11話 女
「おい、いいかげん目を覚ませ」 臀部を蹴られ、その痛みで創真は意識を取りもどした。 どうやら朽ちた事務室のようなところに転がされているようだ。ライトグレーのタイルは砂や埃などで汚れ...
「オレの愛しい王子様」第10話 クリスマス
その日は、二学期の終業式の日だった。 午前中に学校が終わり、創真は誰とも名残を惜しむことなく学校をあとにする。 もうひとりで登下校することにはだいぶ慣れた。その道すがら翼を見かけ...
「オレの愛しい王子様」第9話 積み重なる後悔
——今日からひとりで登校する。 迷ったすえ、創真は必要最低限のことを記した端的なメッセージを翼に送った。 かじかむ指先でアプリを閉じ、電源を落としてスマートフォンをスクールバッ...
「オレの愛しい王子様」第8話 暴走のゆくえ
東條の家をあとにして、創真と翼はいつものように並んで帰路につく。 そのころにはもうすっかり夜の帳が降りていた。住宅街には家のあかりと街灯くらいしかないのでかなり暗く、ひっそりとし...
「オレの愛しい王子様」第7話 侵蝕
「なあ、よかったらこれからうちに本を見に来ないか?」 ホームルームのあと、東條は帰り支度をしながら隣席の翼をそう誘った。 今日の昼休み、東條がイギリスで現地の本を買っていたという話...
「オレの愛しい王子様」第6話 心に決めたひと
「おい、創真!」 ふと額のまんなかに鋭い痛みが走り、創真は我にかえった。 反射的にそこを押さえて顔を上げると、翼があきれたような面持ちで片手を掲げながら立っていた。その隣では東條が...
「オレの愛しい王子様」第5話 文化祭
「翼、それ三番テーブルな」 創真が作業の手を止めることなく、用意したシフォンケーキセットを目線で示してそう言うと、燕尾服を着こなした翼は了解と答えてホールへ運んでいく。疲れなど微塵...
「オレの愛しい王子様」第4話 もうひとりの王子様
十月に入って衣替えもすみ、もうすっかり秋だ。 この一か月で東條は十分すぎるほどクラスに馴染んでしまった。自身のスペックの高さなどまるで意識していない様子で、誰とでも気さくに嫌味な...
「オレの愛しい王子様」第3話 王子様の想いびと
「じゃあな、諫早くん」「ああ」 校内の案内を終えると、創真は帰る方向の違う東條と校門前で別れた。 信号を待ちながら、スクールバッグにしまってあったスマートフォンを手にとる。そこには...