春の陽光が部屋に射しこんでいる。
窓を開けるとエアコンの室外機の上で猫が日向ぼっこをしていた。見知らぬ猫である。
邪魔をするな。
そんな顔つきをこちらに向けたあと、ふたたび猫はまるくなった。
男は猫といっしょになって太陽を浴びる。
そして、うたた寝。
目覚めると、近くに大きな生き物がいた。顔と思しきその真ん中に奇妙な突起物を生やしている。なんだかヘンテコリンだ。
寝そべっているところがあたたか . . . 本文を読む
目覚めると、いつもとは違う世界が広がっていた。
何が変わったというわけではない。いつもと同じ。
変わったのは自分。いままでの自分の五感は目詰まりしていたのだ。感覚が覚醒すれば世界は違った様相を呈する。
世界はこんな姿をしていたのか。
男はいつもとは違う列車に乗り、いつもとは違う場所を目指した。
目覚める直前に見た風景。夢にしては強烈過ぎる印象を残したあの風景。男はそこへ向かった。
はじめて見る風 . . . 本文を読む
ちょくちょく鷗外を素材にしているとなんだか鷗外好きのようだけれど、別にそういうことでもなくたんに今読んでいるから素材として引っぱってくるだけ。じゃ、なんで鷗外を読み直しているかといえば貸してくれる人があったから。じつに消極的な理由であって自発的に読み返しているわけではない。自ら読もうと思うならまだ読んでいない「澀江抽齋」を読む。
さて、このような態度を他( . . . 本文を読む