The Smiths と Morrissey

スミスとモリッシーについて。

Maladjusted

2019-11-28 03:54:36 | 日記

I wanna start from
before the beginning
loot wine : "Be mine. and
then let’s stay out for the night"
最初から 話したいの
盗んだワインでも飲みながら言うわ
"私のモノになりなさいよ 今夜は帰らないで"って


Bide via Parkside
semi - perilous lives
jeer the lights in the windows
of all safe and stable homes
(But wondering then. well what
could peace of mind be like?)
公園の側を通り過ぎて待つ
半分危険な人生
安全で安定した家庭の 窓明かりを からかうの
(だけど不思議よね。心が安らぐことなんてあるの?)


Anyway, do you want to hear
our story, or not?
とにかく、私たちの話を聞きたい? それともイヤ?

as the Fulham Road lights
stretch and invite into the night
フルハムロード(※注1)のライトが
伸びて夜へと招くわ


from a Stevenage overspill
We’d kill to live around
SW6 - with someone like you
keep thieves’ hours
with someone like you
… as long as it slides
スティーブニッジ(※注2)のあぶれ者だから
生きるためなら殺人だってやるわ
サウスウエスト6区(※注3)で
───あなたと似た誰かと一緒に
泥棒して暮らすの
あなたのような誰かと
ずっと暮らすのよ


You stalk the house
in a low - cut blouse :
" Oh Christ, another stifled
Friday night ! "
and the Fulham Road lights
stretch and invite into the night
あなたはシャツをはだけたまま 大股に歩いて
"ちくしょう、金曜の夜だってのに退屈だな!"って言うの
フルハムロードのライトが
伸びて夜へと誘うわ


well, I was fifteen
what could I know?
when the gulf between
all the things I need
and the things I things I receive
is ancient ocean
ねえ、私 15だったんだよ
何が分かるっていうの?
必要なモノと 手に入るモノとの差が
古代の海ほど広いって


wide, wild, lost, uncrossed
still I maintain there’s nothing
wrong with you
you do all that you
because it’s all you can do
well, I was fifteen
where could I go?
自由で、野放図で、何にもジャマされること無い
何も持ってない生活がまだ続いている
あなたと一緒にいて悪くなるばかり
あなたがやること全て
だってそれが 私が出来る全てだから
ねえ、私は15だったんだよ
どこに行けるというの?


with a soul full of loathing
for stinging bureaucracy
making it anything
other than easy
for working girls like me
イヤなことでいっぱいの魂
辛辣なお役所仕事が そんなイロイロを作った
私のようなシゴトしてる女の子のために 容易い他の何かを作ってよ


with my hands on my head
I flop on your bed
with a head full of dread
for all I’ve ever said
Maladjusted, maladjusted
never to be trusted
不安で一杯の頭を 両手で抱えて
わたしベッドにバッタリ倒れてる
これが私の話すべて
適応障害の、 適応障害の
けっして信じられることなんてない





モリッシーは歌っていると言うより、まるで詩を読んで何かを訴えているようだ。聴衆に語りかけているよう。
詩の中の彼女のことばを、怒りを滲ませながら語り、ドラムは酷い仕打ちをする社会のように激しく打ちつけられ、ギターが叫びのように、うねり、鳴り響く。

for working girls like me と言う彼女は、あまり良くない仕事をしているみたい。
「スティーブニッジのあぶれ者」「盗んで暮らす」などの言葉を吐いている。

この曲はあまり聴いてなかった。キャッチーじゃない。サビが分かりにくい。取っかかりにくい。
でもモリッシーは良くライブで歌うし、それを聴いてるアメリカやイギリスの観客の女性たちが一緒に両手を広げて歌っているのを観ていて、この曲の歌詞を調べたくなった。
モリッシーのファンは海外では労働者階級の人が多い。
女性ファンの中には、自分の境遇を時には嘆きたくなる人も多いのかもしれない。
歌詞の中の彼女ほどじゃなくても。キツい割りに低賃金の仕事、陽の当たらない、人から軽く見られる仕事、イヤな奴に頭を下げないといけない仕事、単調で退屈で単純な仕事、セクシュアルな仕事。

『サウスウエスト6区でアッパーな暮らしをしたい。稼ぎ? ドロボウすればいいじゃない』
ギョッとするけど、いい暮らしをする手段が思いつかないだけなのだ。哀しいけれど…。
そんなつぶやきに共感したりして。

『 私 15だったんだよ
何が分かるっていうの?
必要なモノと 手に入るモノとの差が
太古の海ほど広いなんて 』

「欲しいもの」じゃない、「必要なもの」が、自分には手に入ることは無いと15歳で気付いてしまうと言うのは、どんな人生なんだろうか。
安心出来る家庭、教育を受けること、一人の人間、女性として、権利を守られ、扱われること。
それが無い15歳って、世界にはたくさんいるんだろう。

歌詞を知って何度も聴くと、だんだんこの歌を目を輝かせて聴く女性たちの気持ちが分かってきた。

彼女ほどじゃ無いけど、手に入るはずのものがだんだん少なくなってきた。
私の年齢なら手に入ってるはずだったものが、どうも手に入らなさそうだ。

親世代が手にしていたものが、私たち世代には無理になってきた。持ち家あり、子あり、クルマあり、老後の安心と年金あり。適切な医療が受けられるか、とか。親世代では当然手に出来ていたものが手に入る? 手にすることが出来る?
女性は、妊娠出産でキャリアが御破算になるのが当たり前の社会。
働いたぶん、学んだぶん、生活や将来が安定するという気がしない。サービス残業、タイムカードを押す前のタダ働き…。もし離婚したら? 母子家庭になったら? 失業したら? もしカラダが動かなくなったら?

モリッシーが歌い終わったあと、曲の最後にコーラスが入る。

There’s nothing wrong with you, oh,
There’s nothing wrong with you, oh
········
あんたが悪いんじゃない、
あんたが悪いんじゃない、

慰めの言葉が虚しくこだまする。ありがとう、うれしいよ、でもね … 。


自分が報われてなくて、社会の傍らでひとりぼっちだと感じている人は、この歌を目を閉じて聴きながら、自分の思いのままに踊ったらいい。歌詞を噛みしめながら…。



※注1 フルハムロード(Fulham Road フラムロードとも訳される)
ロンドンの西のハマースミス・アンドフルハム・ロンドン特別区内のフラム地区を東西に跨る道路。

※注2 スティーブニッジ(Stevenage)
ロンドンから北へ50キロの場所。第二次世界大戦直後に出来たニュータウン。人口8万人余り。

※注3 サウスウエスト6区(SW6)
フラム地区の緑豊かなエリアにあり、上流階級の人々が暮らす家が建ち並んでいる。





1997年リリース"Maladjusted"収録曲












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