アコギおやじのあこぎな日々

初老の域に達したアコギおやじ。
日々のアコースティックな雑観

良い、酔い、小旅行

2007-06-19 | Weblog
 久しぶりに楽しい旅行だった。

 6月16日。午後6時ごろに仕事が終わった。暑い一日だった。体の芯に、曖昧な気だるさが残っていた。

いつもより早く帰れる。唐突に旧知の友人の居酒屋を訪ねたくなった。

 友人というか、「兄弟分」の盃を交わした「兄貴」である。ここ数年会っていない。郡山駅から2駅の三春町にいる。

 後輩に郡山駅まで送ってもらって、午後6時48分郡山発の磐越東線に。この2両編成の小さなローカル線が、また良いのだ。

 「ガタンゴトン、ガタンゴトン」。眠気を誘うような穏やかなリズムを体に刻み、車窓の風景もまったくせわしくなくゆったりと流れる。

 気持ちが良い。郷愁じみたものも感じて、駅の売店で買った350ミリ缶のビールを発車してすぐに開けた。「うぐっうぐっうぐっ」。3口で飲み干した。

 軽い酔いが脳を揺らし始めた。ちょうど夕日が落ちる時間帯だ。西の空のまぶしいが、その光があまり刺激的でなく、柔らかくて存外に心地よい。脳が休み始める。いい酔いだ。

 電車には高校生が多いが、都会の電車のように騒々しいガキたちはいない。みんな車窓をながめたり、本を読んだり。高校生も環境がよければ、きちんと年齢相応でいられるのだなあ。

 午後7時ごろに三春駅着。目指す居酒屋は駅から五キロほど。歩き始めた。

 で、20分後にやっと着いた。あら、閉まってた。

 「兄貴分」の携帯電話にかけてみると、「早朝にカブで走り始めた。いま宮城」とのこと。「きょうはこっちで泊まる。店は休み」。朝起きたら天気がすごく良かったので、好きなホンダ・カブで走り始めてしまったらしい。この親父、バイクを27台持っているのだが、ここ数年はカブ号がお気に入りらしい。

 相変わらず、行き当たりばったりだなあ。

 しょうがない。こっちも思いつきで電車に乗ってしまったのだ。

 この地域に住む後輩を呼び出して相手をしてもらおうと思ったが、電話に出ない。しようがない。駅に戻るとこにした。また20分ほど歩く。途中、酒屋でビールを買って、電車の時刻を聞くと、あと1時間半は来ないとのこと。

 「まあ、いいや」。三春駅まで歩ききった途端に、後輩から電話がきた。通話圏外にいたらしく、「すみませんでした。迎えに行きます」と心配してくれたが、私はこの時点でかなり気分が良くなってしまい、「旅気分」モードのスイッチが入ってしまっていた

 「一人がいい」。丁重にお断りして、駅で1時間半後の帰りの列車を待つことにした。

 駅前のターミナルには、鬼の角のような装飾を施した大きな純白の車が止まっていた。イルミネーションもすごくて、室内はキャバクラ状態。車の外にはアンちゃんが生後6ヶ月に満たないような赤ん坊を抱きながら、友達に車自慢をしていた。

 「車がかっこいいのは分かったから、早く帰ってやれ。お前、ゾクの前に親だろ」

 アンちゃんが消えた後、部活帰りの高校生たちも次第にいなくなった午後8時あたりから、駅は静寂に包まれた。

 三春駅には列車待ちの人のためにミニ図書館があり、これは利用者の善意を前提として運営されているらしい。漫画本を一冊とって、ベンチで漫然と見ていた。

 駅員が掃き掃除をしている音が遠くに聞こえる。酔いもあるせいか、少し冷たい風が心地よい。この空間には、俺、一人きりだ。

 北海道の百人浜や利尻島のキャンプ場でも、こんな孤独を味わったことがある。日常を離れた快適な静寂、孤独。これが旅行の醍醐味である。


 9時に列車は来た。郡山までの車中には、これから夜の街で格好をつけるための準備を整えたアンちゃんや、疲れた様子のおばちゃんが乗っていた。なんだか、人間模様が垣間見えるようで、列車の旅行も味わい深いものだった。

 郡山に着いたら、喧騒と汗臭さに紛れて、せっかくの「旅行気分」は瞬時に消し飛んでしまった。さらに代行運転を頼もうと会社まで歩いたら、社員たちが役人みたいなまじめな顔をして仕事をしていた。

 やれやれ、帰ってきちゃったなぁ。

 でも、久しぶりにいい気分の数時間を味わえた。
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