MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

スパイラル・スリー 第四章-1

2014-03-02 | オリジナル小説

        4・伏魔御殿の夜

 

 

             欠片達

 

次元の狭間に形を取らない意識の欠片がヒラヒラと舞いながら会話をしている。

『・・・それにしてもあの霊能者は予定外だった』

『・・・まさか生け贄を奪われるとは』

『・・・きっとマザーの差し金だよ』

ひとつの影はチッとでもいうようにもやもやと・・・ますますもやもやとした。

『・・・みんなの思惑もあるしね』

『・・・おまえの味方じゃなかったのか』

『・・・統率できるとしたらマザーだけさ』

『・・・マザーはけして強権を発動しない』

『・・・我々にも干渉しないように』

『・・・時間が稼げただけでも良しとしない?』

『・・・あいつも殺されれば良かったんだ』

『やっぱり、それが狙いだったんだ・・・』

『だったらどうする?』

『・・・・・・』

『・・・なんのために』

『あいつに近づけたと思っている』

『・・・無事で良かった・・』

どこかキラキラとする。

『勘違いするな』

『・・・わかってる』

『おまえはあいつの友達ではない・・・』

意識の断片達は異次元に漂う破壊された箱の穴へと舞い落ちて行った。

『なんにしてもいまいましい霊能者・・・』

舞落ちた先には二つの死体が転がっている。首がない男女の死体だ。

どういうわけか、首は見当たらない。誰が?彼等は気にしなかった。

遺体を慈しむように意識がまつわりつく。

『・・・どうするの?』

『予定は修正される』

『・・・彼はどうなるの?』

『・・・偽りのうえに更に泥を塗る』

『・・・ひどいこと言うね・・』

意識達は寄り添い、遺体から離れくるくると回った。

『悪かった』

『悪いのは僕だ・・だって、二人で決めたのに』

『そうだ、二人で決めたんだ』

『・・・マザーの意志も既に決まっている』

『最終的な着地点は・・・』

『緋色の鳥が狩りにくるまで・・・』

『・・・どちらが先に尽きるか』

『・・・死に損ないの競争』

『それは・・僕達も同じ』

『・・だからせめて』

意識は絡み合い一つとなり、流れるように戯れ続ける。

『そう、二人は』

『死ぬまで一緒』

『いつまでも』

『どこまでも』

次元の狭間に浮いた黒い箱はゆっくりと解体していく・・・


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