MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

スパイラルフォー-13〜14の間

2017-12-20 | オリジナル小説

宇宙(そら)との間

 

 

神月からも通じる遥か上空次元に青い影があった。

「とうとうミズラとマサミは不法滞在ユウミンのテサキか。ミを落としたもんだな。」

「カバナのスパイと互いに食い合うことになるんでしょうか。」

「そうウマク行くか。このホシにはマモノがいる・・・」

視界は歪み安定しない。

「次元酔いしそうです。思ったよりも、神になった気分はしませんね。」

カプートこと418。「せいぜい4大天使ですか。」

「カミにはならないし、テンシどもよりオレたちのいる深度の方が深い。」

「まぁ、そうでしょうけど。」

負けず嫌いなアギュの答えに418は笑いをこらえて意識を集中する努力をする。

だがしんどい、とてもしんどい。

「ここはイマまででイチバン、フカイ・・・ココは」

ざらついた空間、比重が重い。それはアギュも418も意識の端に言葉を乗せているでわかる。

細く頼りない今にも分子崩壊しそうな息だった。

そこで『アギュ』418は物理的会話をやめる。アギュと418はより一つに溶け込んだ。

『ここでは私たちすら、気を抜くと互いに分離してしまうようです。』『そうだ、支え合わないとぺしゃんこだな』アギュも意識内の会話で答える。『おそらくここが・・・ブシツセカイのハてに近いのだろう。このサキがまだありそうだが・・・イマのオレたちにはゲンカイだ。』

臨界進化したオリジナルである分があるのか、経験値の高いアギュの方が次元変換に耐える力が強いようだが。もう少し進んで・・・意識が保てるかどうか・・・?

『すべての物質は・・・データが・・・すり潰されて粉々になりますよ。』

『だがタンジカンだが、ここならダレにも気づかれない、ジシンがある。』

『イリトにも・・・連邦にも?』

二人はアギュの中で遥か現実界を脳裏に見ているのだ。それでも集中しないと無理だった。上とも下とも言えない。あるいは重なっているかもしれない。遠いのか近いのか、常に流動的な場。アギュの物理的肉体は神月の家にいる。

最近、アギュが度々こうして長くまどろむことをガンダルファやタトラは気づいている。

体の臨界が進むための変化と警戒していても、物理的体から動かぬままに引き寄せた次元をさまよっているとは思ってもいないはず。ガンダルファの契約ドラゴン、ドラコはある程度は知っているがガンダルファにどこまで話しているのか。

先ほどからそのドラコがの次元の空間外を、しきりによぎるのを感じるが、今の二人はドラコにも容易に見つけられない。激しくブレたドラコの影が二人を探しながらアギュのすぐ横に現れ、消える。二つの次元は重なっているが遠いのだとわかる。

『ところで』418がさっきまで標準を合わせていた座標の光景に話を戻す。

『イリトの事をどの程度、信用していいのでしょう?』

『カバナのイヌか。アイツがいうことがスベテだとはダレも思ってないだろう・・・オレたちドウヨウに。』それなのにこのような展開で妥協するとは。『レンポウもレッカしている。』

『カバナの目当ては次元生物の存在の確認なのでしょう?イリトが地球を渡さない理由にそれをあげたのは間違いだったのでは?』

『それはイリトよりジョウソウブにイッタだけなんだとサ。それがカバナにモレタのさ、カンタンにな。』

『イリトは・・・まだ権力基盤が弱いというわけですね。信用されていない。私たち、臨界進化体の情報を一手にしていることで反感をかっているのですね。お気の毒な。』

『そのブン、オイシイオモイをしたのはタシカだ。』

『つまりカバナから来た男は・・・イリトより上位の中枢の意図も背負っていると言ってるわけですね、イリトは。イリトの報告だけじゃ待てないんですかね。』

『ワヘイが絡んでるのさ。新しいキバンが作られる・・・ダレもがワヘイ以後のヒューマンカバナレンポウを見据えて、その中でのチイをスコシでもユウリにするタメ動こうとしている・・・

オクレを取りたくないのさ。』

『連邦とカバナが・・・今更、一つに戻るなんて、あり得るんですかね。最初に聞いた時は驚きましたが・・・』

『そうなれば、ユウリのチキュウはカバナとレンポウのイタばさみから逃れられる・・・違うか?

サンザン脅した後で、アマイ飴玉をオレたちに差し出したつもりだ、イリトはな。』

その方が我々を扱いやすくなると踏んだとは、なめられたもんだと。

『カバナの侵攻は避けられないという話だったのに、水面下でずっと和平交渉が続けられていたなんて・・・裏切られた気分です。』

『それがキンダイ戦というヤツのジョウシキらしい。ジカンが経てば経つほど難しくなるバアイとたやすくなるバアイがある・・・コンカイはゼンシャか。』

『遊民のあの男を助けたのは、どういうわけなんです?カバナのスパイに殺されるところだったのですから・・・だから、悪い男とは思えない?。あなたらしくないような』

『単なるステゴマ、ムノウだからかもしれないがな。』アギュはせせら笑い、笑いながらも意識は冷たく蒼くなる。『違う・・・感じないか?サイキン、ずっとだ。ナニカがオレたちに干渉しようとしている・・・そんなカンカクだ。それとオナジものをアイツからを感じた・・・だからタスケようと・・・。』

そうでもなければ不法侵入者の一人二人、囮にされて死んだところでどうでもいい。

アギュがそう言い終わった瞬間、彼らのいる次元の層が激しく振動したように感じた。

『まずい、潰されます?』『これだ・・・このカンジ・・・すぐそこに・・・』

『戻ります。限界です。』初めて418が主導的立場で決断し離脱する。

 

彼らは自分たちを変換し階層をかなり低いところへとあっという間に下る。

いつドラコに見つかってもおかしくないところまでだ。

そこまで来るとかなり楽になったが・・・二人はずっと無言でいた。

『・・・これまでの臨界進化体が逃亡したわけですが』ようやく口を開いた418だが意識での会話のままだ。『外部からの接触ということは・・・ありえませんか?』

「あるかもな」アギュは言葉を用いる。ぶっきらぼうな言い方といい、この話は終わりだという印だった。418もすぐに話題を変える。「それよりもあの子供です。なんだか僕には他人に思えない・・・」「作られたからか。」「もっと・・・それだけじゃない。あの子供、オメガ星系の遺伝子じゃないですか。」「オメガ」アギュの故郷、臨界進化を出したが故に丸ごと、連邦に封じられた太陽系だ。「よくわかるな。」「なまじ研究していたわけじゃないですからね。」かつて418が関わっていた実験とはアギュのDNAをもとに臨界進化を起こさせるものだったのだ。

「オメガの遺伝子が手にはいる可能性がわずかでもあるところといえば・・・」

「ウラギリモノのケフェウス。」

(アギュ!見つけたにょ!)

現れたドラコがアギュに飛びついてきたのはその時だ。

「ドラコ、シゴトだ。」


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