MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

夜の雲をみる

2014-05-10 | 絵葉書

© Paul C. Pet / Strandkwal

 

 

雲取山

 

以前に一度、

登った時に

分岐点でまちがいました

次第に道が細く草深くなって来て

さすがにこれは違うのではないかと

仲間と相談のうえ

引き返したのが幸いでした

 

ただ予定を大幅に遅れてしまい

山小屋にたどり着けたのは

既に5時過ぎ

混雑していたので

予約していた夕食はキャンセルとなり

カップ麺に

部屋も母屋から独立した

板小屋になってしまいました∧∧

土間の半分の床に木を張った

ほんと納屋って感じです

そこに私達

まだうら若かった女3人だけ

布団を敷いて寝ることに

電球ひとつ

 

しかしその小屋

西部劇の酒場みたいな

両開きの戸があるだけで

鍵もないんです

 

それが気になって私はなかなか寝付けません

熊だっている

もしも

誰かが入ってきたらどうしよう・・・

そんな気配に何度も目が覚めます

外に出ると月明かりに照らされて

静まり返った山の闇は深い

黒々と深い

 

同じ夜

友人の見た夢

そのドアを元気良く開けて

若い男が入ってきたそうです

『こんばんわ!○○を回って来たら

遅くなってしまいましたっ!すいません!』

大きな声ではつらつと叫んだそうです

陽にやけた笑顔で

体育会系

(20代前半 なかなか好みだったとか)

服もリュックも

リアルに見た

(昔のことなので忘れましたが色とか生地とか材質まで)

その声で目が覚めたはずなのに

勿論、誰もいませんでした

 

 

もう一人の友人は

顔に微かな風が繰り返し当たって

明け方、眠りから覚めたそうです

窓からのすきま風と思ってハッとする

窓、ないじゃん

しかも自分は入り口から一番奥に寝ている

風からもっとも遠い

風が来るのは壁

まるで誰かが息を吹きかけている?

そんな想像をして怖くなり

布団をかぶって

目を開けることなく

無理矢理寝てしまった

 

これはみな

山から降りて

先の友人が

「あたし、変な夢見たんだよね」

って始めてから

みんなでした

答え合わせ

 

今思えば

そもそも

その夢を見た友人のせいで

迷いそうになったのだった

仲間の不安の声も届かないほど

一人でずんずん先に山道を突き進んでいった彼女

既にもう魅入られていた?

なんてね

 

最近

遭難者が立て続けに出て

雲取山、話題になっていますね

そのニュースを観ていて

ふと思い出したことです

 

私達もちょっとしたことで

山に迷ってしまったかもしれない

夢の若者はそんな一人なのか

今も山小屋を目指して

辿り着く幻実に彷徨っているのか

永遠に・・・?

 

つくづくと

山はなめたら

あかんぜよ

 

夢か現か

あとからじわじわ

ちょっと怖い

思い出です