ガンダルファは目の前に迫った女の唇を咄嗟に避けていた。
「おい!よせよ。」思わず絡み付く腕を引きはがす。
「何、考えてんだ?こんな時に。」
「だって、怖いんだもの。」髪の隙間から女が口を尖らせるのが見える。
「あたいにもっと優しくしてくれたっていいじゃないの。」
「自分で歩け。」閉口するガンタは女を下に降ろそうとした。何かが変だった。しかし女は肩に縋る腕を解こうとしない。
「変な人・・・ひょっとして、女には興味ないの?」
「あのなぁ、」ガンタは苛立つ。「状況を考えろって言ってんの!」女の肩を両手で掴んで引き離そうとした時、薄明かりの中で髪の間から女の顔が覗いた。
「あれっ?お前って、飯田さんだよな。」ユウリに似通った顔立ちにドキリとした。
ユウリ?いや、ユウリというか・・・誰だ?。ガンタの思考はしばし静止する。
すると、女の方は男の目の中にようやく望む表情を見いだしたと思い違いをしたらしい。肩から腕へと手を滑らし、婉然とシナを作って微笑みかけた。
「そうよ。あたいが・・・飯田美咲。麗子とも呼ばれけどね。」『レイコ?』どこかで聞いた名前・・・ガンタの頭の中で声がする。
(ガンちゃん、にやけてる場合じゃないにょ!)『ドラコ、どこにいるんだ?!』
(その姉ちゃんは危険にょ!目くらましを仕掛けてるのにょ!気を付けるにょ!)『目くらまし・・くそっ、そうか、ユウリの母親の名前だっ?!』
ガンタはまるで毒を持った蛇から身を避けるように、自分でも思いがけない力で女の体を振り払っていた。上背はあるが男よりは所詮華奢な美咲の体は勢いよく投げ出され、壁に激突した。
「あ、まずい!」さすがにハッとする。「ごめん、つい。」距離を保ったまま伺う。
女は起き上がる気配がない。仕方なく用心しつつ、ガンタは距離を詰めた。
「大丈夫?」と身を屈めかけた時。
(がんちゃん!)ドラコの警告。
辛うじてガンタは喉元を狙った美咲の口の攻撃を躱す事ができた。
「うわっ!怖ぇっ!」「バカ男!また避けたわね!」
後ろに素早くのけぞった男の喉笛を切り裂こうとした歯を唾を飛ばしながら、美咲はむき出しにする。反転し、足で床を蹴りさらにガンタを追うが、ガンタも負けてはいない。人にしては常人でない素早さで右に左に上に下へとすべてを躱した。突っ込んで来る女の体を避けると、その体の背中の急所を突く。まともな体ならこれでしばらく動けなくなるはずだった。女の肉体にマジな腕力など振るいたくはなかったからだ。美咲の体は一瞬、痙攣し動きやむかと見えたがそうはならなかった。肉体へのダメージなどものともしない。立て直すと、尚も遅いかかる。
(ガンちゃん、ソイツは人間じゃないにょ!遠慮は無用にょ!)
その声にガンタは相手の体の下に身を滑り込ませると、下から美咲の腹を足で思い切り蹴り上げた。その反動を利用し、自身は部屋の隅へと後退した。うめき声をあげ美咲は、こちらも壁を蹴ってくるりと回るとそのまま4つ足で着地した。
「おまえはなんだい?!人間じゃないのか?」
憎々し気にガンタを睨みつける充血した目はまなじりが切れ上がり、歯をむき出した口からは顎へと涎が伝う。ガンタは人間ではないと言われた時のアギュの気持ちってこんな感じか?と思う。いや、こんなもんじゃないよな。隙が産まれる。
女の動きは獣のように素早い。浴衣がはだけ下着が覗く。それに気を取られたわけではないが、男の喉に牙が迫る。ハッとしたガンダルファは腕で防いだ。男の腕に女の歯が食い込む。女は腕を噛みちぎろうとギリギリと顎を動かす。手首に巻いた腕時計の皮バンドが噛み切られたが、何故か腕を噛み切ることができない。涼しい顔の男は自由になる方の腕で女の額の真ん中に静かに指を当てる・・・と、その瞬間、女の額がスパークし女は悲鳴を上げて後方に飛びずさった。
その理由はガンタが生身ではないということなのだが、それはこの『果ての地球』に住む人類や魔族には到底預かり知らぬこと。オリオン人達は生身のように見えるが、皮膚のように薄いスーツを着ているとでも言えばいいだろうか。皮膚呼吸もできるこの薄皮一枚が時に温度変化から体を調整し、時空や磁力、精神攻撃から守り(ある程度の限界はある)その他、あらゆる物理的衝撃から人体を守っている。髪の毛一本から覆われているのである。(抜け毛を防いでくれるのかまではさだかではない。)彼等のこめかみにこの星の銃器を当ててぶっ放したとしても彼等は無傷でいられる、ということなのである。場所によっては、多少の衝撃は受けたとしても痣になることもあるまい。
強度や深度も自身が意識で調整している。重力に対しても。それがガンタの目を見張る動きの答えである。人体が追い込まれた時に脳によって開かれる時空における滞時空時間にもそれは強い優位性を与えている。
そして軽度であるが、この薄皮はバッテリーの役目も持つ。触れ合う肌同士の摩擦や体を動かすことによって蓄積されたエネルギーを使って、攻撃する要素も。
床にもんどり打って転がった女はしばし顔を激しくこするような動きを繰り返した。
その間にガンタは入り口のドアまで走る。
「あっ、あたいの顔を焼いたねぇっ!」
玄関ドアは固く閉ざされている。ガンタは自身の出せる力を増幅させてそれをこじ開けようとした。しかし、それは開かない。
『なんだ?なんで開かない?』
(ガンちゃん、それは次元の力がかかっているにょ。そのドアはガンちゃんのいる時空に乗ってないのにょ。微妙にずれてるにょ、力任せじゃダメにょ!)
『なんだって?それじゃあ、やっぱりこの女って本当に人間じゃないんだ?!』
(さっき、そう言ったにょ?がんちゃん、お待ちかねの魔族なのにょ)
ガンタはドアを背にして改めて女を見た。女は再び獣のように立ち上がっている。その顔は爛れた皮膚が垂れ下がり、そこから見た事のない顔が覗いていた。
『ひいぃ!ほんとだ!』とはガンダルファの心の悲鳴。
「お前はなんなんだい?あたいの知らない魔族?天使?どっちなんだい?デモンバルグの仲間なのかい?」
「そうだなあ・・」ガンタは言葉を濁した。「俺は人間なんだけど・・君は飯田美咲じゃないんだよな?麗子さんでもない・・・」始めての魔族の女。嘘くさいデモンバルグとは違う、ほんまもんのホラー。感動さえ覚える。「お名前を教えてよ。」
「あたいはシセリ。知る人は知る、大淫婦さ。お前はなんだぁ!?」
「俺はガンタって言うんだ。」困る。期待には答えられそうもない。「人間だ。」
その答えにシセリはいきり立つ。あたいをバカにしやがって!
「ガンタァ!」名を呼ぶなり、その体は壁に垂直に取り付き、そのまま4つ足で天井へと駆け上がる。ガンタは髪が逆立つ程の興奮を覚える。
「すげぇ!これってドラコ、俺って肉眼で見てるの?!」
「ふざけるなぁ!!!」
シセリは絶叫し天井を蹴った。
ガンタは脳で時空を開く。遅くなった時間の中で、真上からかぶさって来る体に拳を叩き込む。これでもかと叩く、叩く。出せる限りのパワーを使用すると、さすがに魔族の女も体を翻弄されながら絶叫を迸らせた。
(ガンちゃん、下にょ!)
なんだこれは。巨大な鍋の口の上空にガンタはいる。重力が失なわれる感覚。
(もう1人、魔族が潜んでいるのにょ。そいつがここにだぶったもう1つの次元を管理していたのにょ。)『だぶった次元?』(これってその女が作った次元なのにょ。だからそいつが開いてくれないとドラコにもどうしようもなかったのにょ。でも、これで大丈夫にょ!思い通りの展開にょ!)『これでお前のいるところと繋がったってことか?』(まだまだにょ!もう一踏ん張りにょ~!)
目も止まらぬ早さでシセリに鉄拳を叩き込みつつも、ガンダルファは目の隅に黒い存在を認めた。その口が開くとモクモクと黄色い毒の鱗粉のように瘴気が渦巻く。饐えた匂い。「シセリと共にお前も混沌に落ちて死ね!」黒皇女がこう笑を上げる。
(ガンちゃんが殴ってる魔族を下敷きにするのにょ!その女で脱出口を開いて欲しいのにょ!)
ガンタが用いている時空は黒皇女には感知できなかった。それは黒皇女の作ったこの時空と同じ、ガンタ自身のものだからだ。その異時間をフルに活用する余裕がガンタにはある。鍋へと突入するたかだか2mの間にもどれほどのことができることか。浮かしたシセリの体を引き寄せ、しがみつくなりくるりと身を返す。魔族の体を墜落への盾としたのだ。足先から混沌に突入したシセリの体が、混沌を引裂く。その瞬間、混沌の表に刺さったその体を伝わり、ワームドラゴンが脱出して来た。
シセリと引き換えに。魔族の体は混沌に沈む。絶叫と共に跳ね上がり、蝦のように反る体を力づくで押し込んだ。
(掴まるにょ!)「ガンタ!」「香奈恵?!」状況が読み込めないまましがみつくなり、ドラコは全身をバネにして上へと跳ねあがる。
縋り付くかぎ爪をヒレが容赦なく払い落とした。むなしく腕を空に切る、のたうつ女の体がすぐ真下のべとつく水面の底へと沈んで行くのを見たような気がする。
『なんだ?何が起こった?』黒皇女にも掴めない。人型を失いかけたシセリの姿が混沌に落ちるのは確認した。しかし、混沌から何かが出現し男を上に連れ去ったことしかわからない。デモンバルグと一緒に混沌に投げ込んだシセリのお気に入りの女子高生と光の容れ物にした鈴木真由美の姿も一瞬垣間見えた気がする。あの娘に何が?なんの力が?あの女だ!やはりデモンバルグの追っていた光とそっくりのあの光の力に違いない。混沌から自力で脱出するなどと!
慌てた皇女は追っ手を放つ。
しかしドラコは気にもしない。マイペースで次元を変換して進んで行く。ワームドラゴンの作り出す時空に守られた3人の乗り手達にはなんの影響もない。それでもドラコは注意深く、御堂山を巡る自然や環境が幾重にも作り上げた次元の重なり合う隙間を選んで、それらを見極めるように捥ぐって行く。
香奈恵とガンタは離脱するドラコを追った闇が壁のように追撃して来るのを見たが、ドラコが次元を切り替えていくその早さに付いて行けなかったのか気が付けば回りには何もなくなった。ドラコは闇を退けたのだ。
(これで追跡は不可能にょ!)ドラコは内心、得意満面だ。(我ながらドラコはできるのにょ。やれるドラゴンなのにょ~)
「ガンタ!」目の前に香奈恵の顔がある。なんとも言えない複雑な表情を浮かべていた。「香奈恵、やっぱここにいたんだな。」ガンタは安堵の声をあげる。「それに・・妊婦さんも?」
(ドラコが二人を救い出したのにょ!今はガンちゃんも救って3人にょ~)
足下に見知った竹本の屋根が近づいて来た。ガンタは足を伸ばすと引き寄せるようにそこに降りた。香奈恵が降りるのにも手を貸す。
(まだ、ここはダッシュ空間にょ。レベル1ぐらいにょ。変換するにょ?)
「とりあえず、妊婦さんを降ろさなきゃ。」ガンタは香奈恵を屋根に座らせると鈴木真由美の体をドラコのヒレから受け取り瓦に横たえた。
「しかし・・・この人をどうやって返すのがいいんだろうなぁ。」
「ガンタ・・・」香奈恵は屋根の上を見回す。何かが変だった。まるで耳の中に何かが詰まったような感じだ。その感じはさっきまでいた混沌の中に似てなくもない。
旅館の入り口からわらわらと人が出入りしているのが見えるが声がまったくしない。誰も屋根の上を見上げない。屋根の上にいる彼等に誰も気が付かないかのようだ。
「これって・・どういうこと?」
ガンタは黙って2階の廊下の窓を外側から開けた。
「香奈恵、今ならここから部屋に戻れるぞ。」香奈恵が始めて見る真剣なガンタの表情だった。「そして、寝ろ。何もかも忘れて。これは夢なんだから。」
香奈恵はガンタを見つめる。とぼけたドラゴンもこちらを見守っている。
数分が過ぎた。「嘘。」香奈恵はゆっくりと首を振った。
「これは夢じゃないもの。ね?ドラコ。」
(ドラコに聞かれてもにょ~ノ~コメントにょ~)
「ずるいわ。」香奈恵はちょとだけ笑う。泣きそうになる。
「さっきまでは夢だと思っちゃいけないって言ったじゃない。さっきは夢じゃなくて、ここからは夢だなんて。」
(確かにご都合主義なのにゃ~でも得てして人間の人生はそういうものにょ?)
「それは、いいから・・」と言いかけるガンタに香奈恵は真っ正面から向き合う。
「これは夢じゃない。ガンタは知ってるのね。ねぇ、ちゃんと話してよ?」
「う・・・」一瞬詰まった。すばやく、頭を巡らす。
「ああ、わかった。わかった、後でちゃんと説明するから取りあえずは大人しく戻ってくれ。」(がんちゃん心にもないこと言ってるにょ)『黙れ。』
香奈恵はしばし黙って涙の滲んだ目でガンダルファを見つめた。
「ガンタ・・・ほんとよ。嘘つかないで。」香奈恵の顔が妙に大人びて映る。
「私、ガンタを信じるからね。」目を反らしもしないその真っすぐな視線。思わず、ガンタはドキリとした。
『なんだよ・・ガキのくせに。なんて目をしやがる・・・これってもう女の目じゃないかよ・・・困ったな・・・』
「約束よ。」後ろめたさを隠して、無意識にガンタはうなづく。勿論、ほとぼりが済めば記憶を消してしまえばいいと考えていたのだ。
「あのさ・・・私、部屋に戻るけど寝たりしないからね。」香奈恵はそう言うと窓枠に足を乗せた。「あ、そうだ。真由美さんもどうせなら、ここに降ろしたら?私が発見したことにするからさ。」
「そんなことしたら・・・みんな怒るだろ? 飯田美咲は恥をかくだろうけど。」
でも、とガンタは思う。飯田美咲、あいつは本当に実在したのか。4つん這いで壁に取り付く姿といい。ユウリに似た割れた顔から覗いた野生動物のように美しいが歯を剥いた獰猛な顔。凶相と言える。そして、本当に魔族の女であるならば。あの鍋の底に落ちて、あいつはどうなった?。早くあそこに戻らなくては。
「ねぇ、ガンタ・・・あの人も現実?」香奈恵がポツリと呟く。
「あいつは・・ジンと同じ魔族の1人だ。心配すんな。」
「あの人、悪魔なの?」既に驚きも覚えない自分が不思議だった。
「じゃあ、人間じゃなかったのね・・・」
香奈恵の中でパズルのパーツがカチリと嵌った。それだけで美咲との色々なことに安堵するなんて・・・我ながらご都合主義だと思う。
香奈恵の顔も曇ってるのを見て、慌てて話を反らした。
「まあ、あの女のことはいいよ。お互いに忘れよう。忘れた方がいい。あいつはまともじゃないから。」
この状況もまともじゃないけどと、香奈恵は思う。ガンタは続ける。
「だってだ、香奈恵。考えても見ろよ。竹本で鈴木さんが発見なんかされたら、下手したら、旅館が非難されるかもしれないぞ。よく捜さなかったって。」
「じゃあ、じゃあさ。」香奈恵はペロッと舌を出す。「親父の車にでも入れちまえば?」「・・・!そんなことしたら、お前の親父の立場がないだろ?」
「いいよ、もう。」香奈恵はふて腐れる。「親父なんか罰が当たればいいんだ。」
(じゃあにょ、親父さんが恋しくて帰ったことにすればいいのにょ)
「帰ったって・・・?」「あっ、発掘現場に入れ違いってこと?」香奈恵が手を叩く。
「ドラコ、それグットアィデァかも!ママを悪し様にののしった、親父の面目も適当につぶれるし。」
「わかった。」ガンタもニヤリとする。「山梨の遺跡だっけな?」
「場所わかるの?」
(親父さんの意識を逆に辿れば大丈夫にょ。追跡機能つきにょ。ドラゴンは便利なのにょ)
「じゃあ・・じゃあな香奈恵。」ガンタは香奈恵の問題を後回しにできることにほっとすると妊婦を再び抱き上げる。「ドラコちょっくら、行ってくるか。」
(任せるにょ)
虚空に消えるドラコとガンタを香奈恵は見送った。窓枠を乗り越え、廊下に足を置いた瞬間。ブワッっと回りが押し寄せる。音が、色が、匂いが。現実に帰ったのだ。
香奈恵は実感する。ほっと息を吐く。腕を抓る、頬を叩く。窓の外には最早、ドラゴンの痕跡すらない。傾きかけた陽射しが屋根を三角に切り取って染めているだけだ。風がここちよい。離れの裏の竹やぶがサワサワと音を立てている。階下からは相変わらずの人声。出入りする人達の気配。車の音に香奈恵は窓から身を乗り出した。軽トラが裏から入り、離れの前に止まった。珍しいことに綾子おばさんが運転席のドアを開けている。渡やユリの声もする。ちょうど学校から帰って来たところのようだ。送り迎えをしていることを除けば、いつもとなんら変わりがない。
本当にあれは夢だったように思えてくる。長い夢から覚めた時とあまりに感じが似通っている。ふと指先に目が止まる。キラキラしたものが爪の間に挟まっている。これは・・・ドラゴン、ドラコの鱗からはがれた何かだろうか。自分がどんだけ強くしがみついていたかを思い出す。爪を立てて必死に。このキラキラだけがその証拠といえるのだろうか。そのあまりに微量な痕跡をジッと見つめたのは数分。香奈恵は耐えきれず、厨房から漂ってくる煮物の匂いを思いきり吸い込んだ。雨が降ろうが槍が降ろうが、客が行方不明になろうが寿美恵や綾子は自分達の為に、毎日ご飯を作ってくれるのだ。それがとてもありがたかった。腹がグーグーと鳴る。
難しいことはいい。後で悩もう。飯田美咲の事はひとまずキレイさっぱり、香奈恵の脳裏から消えている。勿論、ジンのこともだ。
香奈恵は幸せだった。真由美さんは無事。ママリンはもう大丈夫。『竹本』も責任を免れる。親父にはまもなく罰が当たる予定だ。何もかも一安心。
ああ、思い切りご飯が食べたい。
心の底からそう思うと香奈恵は階段を弾む足取りで降りて行った。