フードリテイル覚え書き

国内外の食品スーパーを中心に、自分の目で確かめ、感じたものをお伝えします!

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楽しいお店

2017-05-14 14:47:32 | アメリカ
視察は新店に限らない。むしろ古いお店に発見があったりする。

先日のアメリカ視察で訪れたWegmans Mt.Laurel店(ニュージャージー州)。

基本的なコンセプトはウェグマンに共通して浸透しているが、売り方・伝え方はそれぞれのお店によっても違いを感じる。

同じ商品を並べても、説明やパッケージで印象が異なる。





商品ごとの違いをしっかり説明しているハムやボリュームたっぷりの鮮魚のミールキット。







見せ方も一工夫



獲れたての果物販売



他のお店になかった山菜があった。



ちょっとした遊び心も


楽しいお店にお客様はやってくる。





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シアトルのローカルスーパー「メトロポリタンマーケット」

2016-12-14 10:00:00 | アメリカ




メトロポリタンマーケットは、シアトルに6店舗展開している。小規模チェーンではあるが、視察した店舗では、地元紙で10周年を祝う特集がトップ面に組まれるなど、地元の人たちに愛されているのが傍目でも分かる特徴的なスーパーだ。



入口にデリを配置し、即食・簡便に対応している。鮮魚惣菜など本格的なアイテムが並び、クオリティは高い。対面型の量り売りとセルフ型のプリパッケージの2パターンの展開で、手軽さもある。24時間営業であるが、対面型は22時頃にクローズし、セルフ型のみにするなど効率的なオペレーションを構築している(その時間帯はレジも入口そばの特設1つとし、警備員を配置するなど安全面にも配慮していた)。生鮮は、丁寧な売り場づくりが印象に残る。鮮度とローカル(地元産)を重視した、スタンダードな品揃えだが、シズル感があり、昼夜を問わず常に人だまりができている。



特徴的なのがグロサリーで、他では見られなかったアイテムを数多く取扱い、深掘りがされている。多フェースを使って陳列しているので、視認性も高く、選ぶ楽しさにつながっている。提案を意識したエンドでは単品訴求の陳列を行っており、訴求力がある。立寄だけでなく、買上にも貢献しそうな仕掛けだ。また、レジ前では、ハリウッドセレブ御用達の砂糖菓子のコーナー化やチョコレートのラインロビング(地域随一の品揃え)、日常生活をちょっと上質に演出するキッチン雑貨売場の充実など、競合とされるセーフウェイやQFCとの差別化を意識した取り組みを徹底して行っている。使い勝手の良さとここにしかない専門性の追求が個性的なスーパーとしての強みとしてイメージが形成されている。PBを網羅して作らなくても、大手チェーンとは異なる軸でお客様の支持を集められることをメトロポリタンマーケットは証明している。中小チェーンが参考できるポイントが少なくなかった。






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ホールフーズのレストラン事業

2016-12-13 10:00:00 | アメリカ




新フォーマット365とは別に、今年から力を入れているのが店内レストランである。El Segundo店で10月にオープンしたばかりの「The 2ND」とIrvine店の「IRV」を視察した。両店とも同じスタイルではあるが、屋号は異なるようだ。雰囲気はビールレストランに近く、バーカウンターにはいずれも20種類以上のドラフトビールが用意されている。60~80席のテーブル席が設けられている。前菜やトーストサンド、寿司、デザートのアラカルトメニューに加え、プレートやキッズのメニューも用意されている。アラカルトの価格は$10以下のものが中心で、外食よりもかなり安い。





店内の随所にレストランスペースがあるイータリーとは違い、これまでのイートインスペースでの展開なので、店舗販売との連動性は期待しにくい。しかし、外食と比べた時の価格の割安感や生鮮素材を活かしたメニュー提供など、新たな集客装置として今後も取り組みが拡がっていくだろう。ハッピーアワーやスポーツデイなどイベントも定期的に行っており、手軽な飲食スペースとして利用できる。また、店内商品の購入者も利用でき、レストランでオーダーした飲み物にデリで購入した食べ物を合わせて利用するお客様も見られた。中の様子は気軽にうかがえるので、メニューを見て、利用しようと思う人も少なくないのではないか。採算性の問題はあるが、昼時の店内は多くの人で賑わっていた。

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ホールフーズ(新フォーマット365編)

2016-12-12 10:00:00 | アメリカ






アメリカでは、小型店の新規フォーマット「365」を始動させた。今年5月のロサンゼルス近郊シルバーレイクへの出店を皮切りに、7月のオレゴン州レイクオスウィーゴ(ポートランドの南に位置)、9月のシアトル近郊ベルビューと、現在3店舗あり、当面は20店舗の展開を目指している。

この新規フォーマットの開発背景には、成長の鈍化がある。直近の既存店売上高は2016年9月期まで5四半期連続で前年同期比を下回り続けている(同時に、共同CEOウォルター・ロブ氏を降格すると発表した)。その要因は、「Whole Paycheck(ホールフーズで毎日買物をしていたら給料がなくなってしまうの意)」と揶揄されるほど、店舗イメージに割高感が根付いてしまった点や、クローガーやウォルマートなど大手量販店が積極的にオーガニックやナチュラル商品の取り扱いを進め、競争が激化・同質化している点によるところが大きい。さらに、今年に入り食料品のデフレ傾向が顕在化し、食品スーパーで軒並み客単価が減少している点も影響している(同業のスプラウトも今年に入り既存店売上高が伸び悩んでいる)。こうしたなか、ホールフーズが新たな成長の源泉を発掘するには、マーケットの獲得は不可欠であり、店舗イメージの転換と集客力強化を目的とした都市部への出店強化の方針によって「365」は生まれた。都市部では、出店コストの圧縮とドミナントを高める必要があり、これまでの1200坪クラスから、より小さい800~1000坪クラスの売場づくりに取り組んでいる。今回は、1号店のシルバーレイクと3号店のベルビューの2店舗を視察分析したので紹介したい。

まず青果であるが、約140坪の売場面積を、常温と冷蔵とでフロアを区切っており、従来と異なるつくりであった。冷蔵部分は「Veg Valley」と呼ばれ、温度帯だけでなく、壁を金属質状の素材で覆って湿度調整も行っている。いわば、蘇生庫を店内に設置し、より高度な鮮度維持を実現しているのだ。出入口は2ヶ所で、外側からの見通しもよい。中では、葉物やカット野菜、果菜や根菜の一部をばら売りし、少し涼しいが、店内との温度差は大きくなく、お客様も抵抗なく買物ができるだろう。





常温コーナーの大部分は果物や土物をメインに、斜め掛けの平台を使った単品量販型の展開となっている。カット野菜のうち、即食のサラダボウルや温野菜系のキット、最近話題の「ベジタブルヌードル」は、冷蔵の平台を使って、このコーナーに陳列されていた。目的・用途を想定しながら、売場位置を設定しているようである。











精肉・鮮魚は、店内からバックヤードの様子はうかがえるものの、対面販売は行っていない。ほとんどがプリパックであり、加工度の高い商品は削られている。素材商品とシンプルな味付けの商品が中心で、既存店舗にあるような部門横断型のメニューやキットの展開はなかった。また、Sustainably(持続性)の可視化を意識した「Sustainable Seafood」や「Animal Welfare Rating」のアイテムはあるものの、PBブランド「365」が中心で、全てのランクの商品が揃っている訳ではなかった。ナチュラルやトレーサビリティにはこだわりつつ、同じくらい値頃感を意識した品揃えを目指しているのが分かる。







デイリーは店奥壁面に沿って開閉式の扉型リーチインケースで展開している。ブルーボトルコーヒーの缶を差し込みで展開するなど、一部グロサリーのアイテムは混ざっているが、玉子から乳製品、飲料をコンパクトにまとめている。また、ベルビュー店ではスペースあるいは販売・陳列効率の問題からか、チーズや加工肉をオープンケースで展開し、店奥のマグネットとして機能強化を図っていた。





惣菜は店の中心部でのビュッフェ形式とレジ前の即食・簡便を中心としたプリパック形式が用意されている。



この他、設置されていた端末を使ってピザやホットドックが注文できるようになっている。



ビュッフェ形式はこれまでの量り売りから定額方式へと変更されている。シンプルな価格設定で割高感を払しょくする狙いだ。商品の盛り付けや容器が若干チープな印象だが、値段相応と考えれば問題はないだろう。



プリパックの陳列は、デイリー同様、開閉式のケースで保存効率を向上させている。シルバーレイクでは見つけることができなかったカットフルーツがベルビューには展開されていた。ショートタイムショッピングとしては最適な売場づくりであり、既存店舗とは異なる仕掛けの1つといえよう。



酒は第3主通路の壁面に沿って展開されている。既存店舗では成長著しいクラフトビールの売場を強化しているのに比べ、365でもある程度の充実はしているが、主力はむしろワインと言える。ワインの価格帯は、これまでデイリーユースを念頭とした$6前後を中心に訴求していたが、ベルビューでは$20以下のラインアップを重点に置くなど、単価アップにシフトしている。これまでの販売動向を踏まえた動きと考えられ、低価格帯よりもやや高めの価格帯のニーズが多いと推察される。また、有名ワインショップと提携した情報端末が設置され、商品をスキャンすると、商品説明や評価が画面で確認できる。これにレコメンドや食べ物のマリアージュ提案などが加わると、新たな誘導や提案が可能になり、今後の進化を楽しみにしたい。



グロサリーは店舗の右側3分の1程度を利用している。什器はシンプルで、飾り気は少ない。品揃えの深掘りはあまりせず、あくまでPBブランド「365」が中心である。一通りの買物には困らないが、売場の専門性や選択肢の拡がりはなく、割り切った商品構成であった。エンドでは、単品訴求とこだわり商品のコーナーを組み合わせて展開し、こちらも通常店舗と比べると立寄効果は薄い印象を受けた。







冷凍食品は酒コーナーを進んだレジ手前に設置され、平型のケースで展開されていた。その近くにパンコーナーを設置し、レジへと向かう流れとなっている。レジはいわゆるフォーク並びのレイアウトで、行列はできるものの待ち時間は少ない。レジ待ちの列に沿って小物を中心とした商品を多数並べており、ついで買いにつなげようとするしたたかさがあった。





その他にもセルフでフレーバーティーを調合できる「teaBOT」やイートイン内でコーヒーやワイン、ビールなどを提供する「Allegro Coffee Bus」がある。

全体的な評価であるが、品揃えはかなり削り込まれており、商品訴求のメリハリがついた売場となっている。視察した2店を比較した場合、ベルビューの方が売場は大きくなっているものの、生鮮は(目視)で同じくらいかやや小さくなった印象だ。商品回転率は高いが、品揃えが削り込まれると集客力が落ちやすい。これから最適バランスに向けた検証を進めていくのだろう。その意味では、首都圏で小型店展開に向けたダウンサイジングに試行錯誤している各チェーンと課題は同じと言える。ベルビューには月曜日の午前中に訪問したが、精肉・鮮魚についてはかなりの商品補充が必要なほど、売場ケースに穴が目立っていた。これから推測するに、週末は客入りも良く生鮮品が動いているのではないか。一品単価はウォルマートなどと比較しても遜色ない設定で、値頃感を打ち出していることもあり、一定の支持を集めている印象だ。

365で日本の食品スーパーが、一番参考にすべきは人材確保難時代におけるオペレーションの組み立て方にあろう。ITを駆使し、徹底した効率化を図り、作業と顧客コミュニケーションの負担を軽減させている。365店内では、掲示物のほとんどがデジタルに変更されていた。値札を始め、什器の上部もパネル代わりにデジタルサイネージが使用されている。一般に、値札などの店内掲示物の入れ替えは店舗作業の相当な負担となっており、人員不足の現状では大きな課題と言える。その点、365の作業効率が大幅に見直されているのは間違いない。接客については、全くしないのではなくお客様のニーズや利便性を考えた選択肢の幅を広げたと考えれば、新たな取り組みとして捉えられる。人材の確保・育成も重要であるが、今後はIT活用による生産性向上に対する費用対効果の見極め、投資強化への動きも加速すると予想される。365の効果だけではないが、ホールフーズの直近の決算書では販管費を2%以上削減させることに成功している。今後の競争力の強化に向けてはローコストオペレーションの確立が1つのカギを握るだろう。







もう1つ注目したいのが徹底したロスの排除である。商品パッケージ、什器の形・設置場所など、あらゆるところでその意図を感じる取り組みを行っている。さらに、青果では果物平台に枠を入れ陳列量を少なくする取組みや精肉や鮮魚の平台の陳列スペースの見直しなど販売動向に基づいた売場の変化が確認できた。新たな取り組みでは冒頭紹介したVeg Valleyのようにロス削減と鮮度強化がリンクされ、付加価値創造へとつながる成果が表れている。

ホールフーズは、これまで対面販売や店内加工、売場陳列・装飾の華やかさを前面に押し出し、オーガニック・ナチュラル市場の牽引役となってきたが、365によって経営スタイルを変えているのは明らかである。これには賛否両論ある。特に懸念されているのが、既存店支持層の離反で、それは確かに一部では起こり得るだろう。しかし、その事業規模を考えれば、ある一定の顧客層のみがホールフーズを支えているわけではなく、これまでの成長を通じて顧客層の拡大を図ってきたと考えれば、365へのシフトも妥当性のある取り組みと言える。視察をしていてもこれまでホールフーズで見なかった顧客層が来店しており、効果は少なくない。さらに一歩進めて考えると、今後は既存のホールフーズと365の「棲み分け」ではなく「融合」に期待したい。すでにホールフーズを利用しているお客様が、「365も(買物して)いいね」と思わせる進化がなければ、多店舗化は困難であり、ウォルマートやテスコの小型店事業のようなリスクが付きまとうだろう。新規顧客の開拓に加え、既存顧客の利用拡大につながってくれば、新たな成長に向けた道筋が見えてくる。
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ホールフーズマーケット(英国編)

2016-12-11 09:07:39 | イギリス






 イギリスの一般紙「The Guardian」は2015年、「ホールフーズのイギリス事業は2014年より24%売上を増加させ、赤字幅を半減させた」と報じた。2013年にオープンした2店舗(リッチモンド店、フルハム店)を除いた既存店売上は6.8%増加しており、市場の支持を集めつつある。実際の街中でもその買い物袋を持つ人が多くみられた。

 イギリスでは「テスコ」や「ウォルマート傘下のアズダ」、「セインズベリーズ」、「モリソンズ」の上位4社が業界シェアの75%(うち、1位のテスコが40%)以上を占め、寡占化が進んでいる(出所:太田美和子著「イギリス視察ハンドブック」商業界)。いずれもレディミールの進化が著しく、メニュー提案が細分化され、素材の食材提供型から提案による問題解決型へのイノベーションが進んでいる。また、食品スーパーの小型店が数多く存在しているのも特徴だ。イギリスには「日曜営業法」があり、売場面積280㎡を超える店舗は日曜日に6時間の営業しか認められない。そのため、280㎡以下の小型店を積極的に展開し、営業時間の「空白」を埋める形を取っている。コンビニエンスストアのような即食・簡便系の品そろえに加え、一部生鮮食品や調味料などの取扱いがある。そのようなトップ4の小型店とは異なる競争軸で、アッパー層やビジネスパーソンの即食ニーズに対し、ジワリと浸透しているのが、ホールフーズである。今回は、旗艦店であるケンジントン・ハイストリート店(以下、ケンジントン店)、ロンドン中心の繁華街にあるピカデリーサーカス店(以下、ピカデリー店)、ロンドン西部のフルハム店の3店を例に、イギリス国内での差別化の図り方、アメリカ事業との相違、現時点での成果と課題を探っていきたい。



 イギリスのホールフーズの競争のエンジンは、デリを中心とした即食と、豊富な品揃えで専門性を訴求するグロサリーの2部門である。

 まず、デリについて。レイアウトは3店とも異なっている。ケンジントン店では1階にプリパックのサンドイッチ、インストアベーカリー、軽食、飲食を、2階にフードコート型の飲食フロアを設けている。アメリカでも増えつつあるスタイルで、1階で購入したものは、もちろん2階で食べられる。ピカデリー店では、オープンスペースのイートインコーナーのほか、ビュッフェが入口そばのインストアベーカリーに併設されている。昼時には近隣のビジネスパーソンでごった返し、アメリカでよく見かける行列がロンドンにも生まれていた。フルハム店も、同じくビュッフェが店中央部に配置されていた。まだ新しいお店であるが、イートインスペースはなく、あくまでもテイクアウトを想定した売場となっている。イギリスでは付加価値税(いわゆる日本の消費税)によってイートイン(外食扱い)とテイクアウトの価格に差があり、多くの人がテイクアウトを利用している。しかし、ビュッフェ人気はある程度存在するようで、平日の夕方に訪れると、メニューが夕食向けに一新されていた。筆者も実際に冷製と温もののビュッフェを各1パックずつ利用した。夕食想定の1食分として£10弱(1400円弱)であり、外食と比べて割安に済む計算だ。





 他スーパーの小型店はレディミールの種類は豊富であるが、プリパックのため出来立てはほとんど提供されていない。また、外食は値段が高く、毎日となると支出負担が大きい。ロンドンでは屋台形式の移動販売車が結構な人気で、昼時になると大勢の人でにぎわっていた。このような事情から、屋台と比べると値段は高いが、外食よりも安く済み、出来立てが食べられるホールフーズを試す人は相当数いると考えられる。そういった利用客に対し、朝食と夕食を入れ替えることで利用頻度を高め、すそ野を広げる戦略をとっているようだ。

 次にグロサリーである。ホールフーズのグロサリー売場には、どのお店に行っても人だまりができていた。他スーパーの小型店よりも売場スペースを十分に割いており、品ぞろえが充実している。調味料関連から缶詰、オイル類、粉もの、製菓材料、菓子といったカテゴリーごとに深掘りした品ぞろえも魅力的だ。構成はグローバル調達でバラエティに富んでいるが、国内メーカーが作るこだわり商品なども随所に取り入れられている。例えば、ジャム。イギリスでは果物だけでなく野菜や肉をベースとしたものが数多く、食事やおつまみ材料として重宝されている。他のスーパーで見ることのなかった、ロンドン市内にあるメーカーのジャムを取扱い、差別化を意識した展開を行っていた。また、ケンジントン店では、観光客需要に合わせた紅茶やチョコレートのコーナーを人の出入りが多いマグネット箇所で大々的に展開し、にぎわいを生み出していた。チョコレートはこのほか、一部エンドで試食販売を実施してグロサリー売場への誘導を促しているのも、対面販売を重視するホールフーズの特徴を活かした取り組みといえる。



 さらに、バルク販売も売場の随所で行っていた。他スーパーではプリパック商品がほとんどであり、量目の選択や細かな調整ができない。こうしたバルク販売はアメリカでは当たり前のように普及しているが、イギリスではホールフーズの差別化の要素として、ちょっと試したい層や使い比べをしたい層のニーズを捉えている。スーパーフードや冷凍フルーツなど一風変わったアイテムでも行われており、トライアル購買に結び付けようという仕掛けになっている。価格は相対的に高めで、デイリーユースよりも目的買いに合った売場といえる。健康志向を意識しながらナチュラルなアイテムの特徴を活かしながら専門性を高めており、広い範囲からお客様を誘引している印象だ。他スーパーの小型店は、レディミールの提案による問題解決型の品揃えが中心で、調味料や缶詰、オイル類といったグロサリーの買い物ニーズが少ない。そのため、多くのお店で売場が圧縮されている。そこに、ホールフーズは需要喚起の突破口を見出しているのではないか。










 
 さらに、生鮮についても触れたい。
 鮮魚・精肉については、どのスーパーも生産性を考慮し、対面販売に大きな販売スペースは割いていない。素材から調理する機会が減っているためか、生鮮素材の購入が減少している可能性がうかがえた。ホールフーズにおいても同様の対応を取っており、「Animal Welfare Rating Program」などのサスティナビリティの仕組みを導入しているが、販売スペースは小さく、主通路から外れた壁面に配置されていた。



 青果については、生鮮部門としては最大の販売スペースだが、大きいとは言えない。ケンジントン店は別格として、ピカデリー店の売場は20坪程度、フルハム店も同様である。壁面は冷蔵の多段式什器で、売場中央に平台を配置している。他スーパーの小型店では平台を使った陳列がほとんどないので、存在感があった。しかし、国内産アイテムが少ないのに加え、アメリカと違い「Responsibly Grown Rating System」を導入しておらず、品揃えには見劣りを感じる。国内産の取り扱い比率は他スーパーで半分以上であったのに対し、およそ野菜で3割、オーガニックの扱い比率もやはり3割程度といったところか。見た目のシズル感や鮮度はアピールできているが、あまり販売に結び付いているようには見えなかった。イギリスの野菜のパッケージには、産地に加えて生産者や販売期限などかなりの情報が記載されている。これが安全・安心感につながっているのだろう。ホールフーズではそこまでの対応はできておらず、生鮮の支持はまだ途半ばであった。





 カット野菜は国内で生産されているものを外部から調達している。販売期限は視察時+4~7日程度で、アメリカよりも若干短い。他スーパーを意識した価格設定で、「Price Match」と記載したPOPによる訴求を図っていた。



カットフルーツやジュースなどは店内で製造され、加工工程の見えるコーナーを作って売場に動きを作り出していた。このほか、関連販売としては、果物と酒類・飲料、鮮魚とハーブの鉢植えなど、あまりアメリカでは見かけない展開を試みていた。同時に利用するというよりは、関連性を高めてもう1品買ってもらう狙いが強い。リンゴにサイダー(リンゴを使ったビール)といった感じである。





今後の課題であるが、以前から指摘されているようにポジショニングの不明確さであろう。他スーパーの小型店との棲み分けは図れているが、大型店や百貨店とでは依然として曖昧な感は否めない。テスコの大型店と比べてみると、売場スペースの違いから品揃えで見劣りするだけでなく、巧みなPB戦略による価格設定の妙はホールフーズへの割高感を与えているに違いない。さらに高級業態では、ハロッズの商品構成、販売方法、売場づくりには及ばない印象を受けた。イギリス国内でも徐々に浸透し、お客様の支持を得つつあるホールフーズだが、いまなお黒字化には至っていない。ここ2年以上新規出店がないところを思えば、まずは足元の需要開拓を優先していると考えられる。この先、さらなる成長を目指すのであれば、生鮮を活かしたメニュー提案による販売強化が求められることになるだろう。



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