写真は20年以上も前のものとなりました

つれづれなるまゝに日ぐらしPCに向かひて心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつづっていきます

背中が

2019年07月06日 | 随想

ロシアでは6月22日をドイツとの戦争で亡くなった人たちを偲ぶ「記憶と悲しみの日」としているそうで、モスクワの「無名戦士の墓」で行われた式典では、プーチン大統領が大雨の中、傘も差さずにずぶ濡れでこの式典に臨んだ姿が感動を呼んでいるという。

 

大雨の中、微動だにせず「無名戦士の墓」の前で立ち尽くす後姿には、ロシア人ならずとも畏敬の念を抱かざるを得ないだろう。これほど圧倒される背中は見たことがない。

「国」のために戦った戦士にきちんと向き合う、これが「国」のリーダーというものの姿だ。

WWⅡでのロシア(当時はソ連)の死者は2,000万人を超えるそうで、兵士の死者数が1,500万人に及ぶのだそうだ。(因みに日本は軍人が230万人、民間人が80万人に及ぶ。)

この「無名戦士の墓」には「あなたの名前は不明だが、あなたの行為は不滅である。(Имя твоё неизвестно, подвиг твой бессмертен)」と彫ってあるという。何か、この一言で救われるような感じもする。

 

後日、学生たちとの対話に臨んだとき、女子学生からの「なぜ傘をささなかったのか?戦没者への表敬か?」との質問に、プーチン大統領は「雨は突然降るものだ。」と述べた後、「戦争ってのは、悲しいことだが、血と死だけじゃないんだ。ロシアの兵士はどんな天候でも戦った。彼らはそこで生き、死んだ。その日は雨が強く降っていたが、献花の際に傘が必要だなんてことは全く思わなかった。これは当たり前のことだった。」と答え、また、ヨーロッパの有名な比喩で「私は砂糖なんかじゃない。傘をささなくても溶けはしない。」とも答えた。

 

Putin: "I'm not made of sugar"(1分28秒あたりから2分36秒あたりまで)

 

私は砂糖なんかじゃない(画面の英訳では I’m not made of sugar,I won’t melt.となっている。)というジョークめいた言葉だが、オンライン言語辞典(WordReference.com)の「made of sugar?」では、

"Are you made of sugar?" is a very old expression in English (and in England, as a Google search of the expression will show) to express disdain for someone afraid of the rain. A variant was "Are you made of sugar or salt, that you think the rain will melt you?"

「お前は砂糖でできてるんか?」というのは、雨に怖気づく人を貶む英語の古くからある表現であり、他にも「お前は雨で溶けるような砂糖か塩ででもできてるんか?」という言い方がある、との説明が見える。

「雨くらい何だ!」というニュアンスなのかもしれない。あるいは「雨くらいでびびったりするな!」といったところかもしれない。雨なんかより祈る気持ちのほうが余程大切だろ?と言っているのだろう。

 

はてさて、翻って我が国のトップはどうだろう?

第2次内閣発足の翌年、2013年12月26日靖国神社に参拝したときには、ようやく東京裁判史観から解放されるかと期待もされたが、その後は周辺国が騒ぐから、という理由で榊や玉串料の奉納でお茶を濁している始末だ。ここでこそ毅然とすべきだった、と悔やまれる。

 

トランプ米大統領が「日本が攻撃されれば、米国は命を懸けて日本を守る。だが米国が攻撃されても、日本にはわれわれを助ける必要がない。ソニー製のテレビで見るだけだ」と、日米安保に不満を表明したそうだが、そのとき、「いゃあ、貴国製の我が憲法がそうさせてますんで・・・」くらいの皮肉は言うべきだった。トランプは「安部が言うならそうに違いない。」と納得したはずだ。

あと、「誤解があるようだが、ソニー製よりもシャープ製でっせ?」くらいは嚙ませてもよかった。

プーチン大統領がせっかく平和条約を結んで領土問題の解決糸口を作ろうとしているにもかかわらず、順序が違うとか、日米安保が云々とかで将来の見通しを閉じてしまって、開こうという気概が見えない。(「蝦夷ヶ千島」変遷

今までは外交に一定の成果は見られたものの、米露のトップが持つようになった不満をなんとかしないことには日本の将来を隘路に導くだけだ。ましてや、増税の強行は自らの首に鎌を当てているようなものだということに気付いていない。これはかなり危険だ。

そろそろ歴代最長の在位となるとのことだが、人の一生と同じで、ただ長ければ良い、というものではないだろう。惜しい哉。