気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

エゾノギシギシ 時田則雄 

2017-11-24 15:42:00 | 歌集
エゾノギシギシ おまへは同志 さあ今日も野に出て緑の汗流すのだ

青き山の真上の雲の仁王立ち仰ぎつつ明日を歩きてをりぬ

ざらざらの指だ ごはごはのてのひらだ 年ねん木賊のやうになりゆく

南瓜ひとつ抱へて妻が歩み来る霜に濡れたる石を踏みつつ

釘ぬきに抜かるる釘の鈍き音に浮かび来父の太き親指

墨色の廃油の染みし生命線洗へば明日が近づいて来る

鎌をあつれば褐色の実をふりこぼすエゾノギシギシ また秋が来る

長靴は足の抜け殻ほのぐらい闇を宿して突つ立つてゐる

てのひらのぶ厚い男と飲みながら千年前の話してゐる

紺瑠璃の空を翔け来る一羽ありたつたひとりの弟ならむ

(時田則雄 エゾノギシギシ 現代短歌社)

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時田則雄の第十二歌集『エゾノギシギシ』を読む。

1946年北海道生まれ、百姓、とあるように、農作業の歌が多い。北海道帯広市で大規模に農場を営むと聞く。
歌は素直で、大自然と、そこで生きる家族が主なテーマとなっている。
歌集名『エゾノギシギシ』は世界の五大雑草と呼ばれるほど繁殖力の強い草。
自分を投影するように何度もくりかえし、エゾノギシギシを詠んでいる。
五首目の釘抜きの音からの父への連想。九首目の「てのひらのぶ厚き男」で、相手のすがたや労働の様子を思わせる歌に注目した。




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