気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-10-03 19:24:59 | 朝日歌壇
閉館の音楽流れ図書館に静かなざわめき拡がり行けり
(筑紫野市 二宮正博)

木に木の実草に草の実抱かせて秋はまあろきものらを愛す
(福島市 美原凍子)

虫除けの缶スプレーは空となりむらさきしきぶに青味さし初む
(鎌倉市 下田和夫)

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一首目。閉館前の図書館の様子を的確に表現している。私もさっき返すものがあって、近所の図書館へギリギリに行ってきた。結句の「拡がり行けり」は「拡がりゆけり」の方がいいのではないかと思う。「行」の字が意味を持ちすぎるから。
二首目。美原さんの歌は、ハズレなくどれも楽しめる歌。福島県で被災されたが、こういう歌を読むと、やっと落ち着いた気分になられたのだなあと、こちらもほっとする。
三首目。「むらさきしきぶ」は植物の名前。花は6月頃に咲き、9月~10月に紫色の実をつける。上句の日常的なことから、下句の自然の様子に歌が流れて、自ずと秋になる様子がわかる。季節感のあふれる歌。

短歌人10月号 秋のプロムナード その3

2011-10-01 23:36:20 | 短歌人同人のうた
江戸前のにぎりをいうもさりながら大阪寿司の穴子がうまい

まずもってます寿司、酢飯と自己主張しない鱒との相性がよい

(吉岡生夫 寿司談義…吉岡の吉は土の下に口です。字が出ません)

ひとり去りわれのみとなりし店内に「ほろ酔いセット」運ばれて来ぬ

力尽きて落ち来し蝉のかすかなる夏の命を草上に置く

(藤本喜久恵 蝉)

夏休みの始発電車の愉しさはリュック背負へる少年と父

中空(ちゆうくう)の茎あれば七つの穴をあけ笛つくるこころ昔も今も

(和田沙都子 大阪へ)

彫られたる墓石おもての「ハツ」の文字ちちが呼びゐしこゑのかさなる

公園口信号をわたる炎昼の墨をながせるやうな蝉声

(紺野裕子 白い日傘)

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短歌人10月号。「秋のプロムナード」から。
それぞれの個性がみんなちがっているのが、愉快で短歌人的と思う。