気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人9月号 同人のうた その2

2011-09-03 17:34:08 | 短歌人同人のうた
もう耳のなきウサギ生れしとふ二つ頭(あたま)を持ちし牛はも
(水島和夫)

一葉一葉真面目に光を浴びしゆゑセシウム検出されたる茶の葉
(管野友紀)

大津波に遭はずに逝きし母そはの古着を頒かつ被災のうからに
(阿部凞子)

余震にて水面わづかに波立てる藻の蔭にあり目高のいのち
(蒔田さくら子)

生の側にあれば露天湯に落ちてくるヤマボフシふはり朴の葉ふはり
(渡英子)

きのふ来しキアゲハがまたけふも来て夏萩の花にさやりてゆけり
(小池光)

職欄に無職と書かむいまだなほしつぽのやうなものはあれども
(斎藤典子)

ひかりの器と思い眺めるひつじ草花を閉じゆくまでの静謐
(平野久美子)

化粧塩振りたる指の所在なさ友と呼ぶべき一人はあるか
(森澤真理)

生まれつき蒲柳の質にあらざれば出窓にのけぞりガラス磨きぬ
(杉山春代)

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短歌人9月号。同人1欄より。

塑像モデルに

2011-09-03 00:29:03 | きょうの一首
塑像モデルに相応(ふさ)ふ魚村晋太郎通ふか今日も谿のアトリエ
(花山多佳子 胡瓜草)

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花山多佳子の最新歌集の最後の方で見つけた歌。
魚村さんは、よく知っている。魚村さんは金魚のアロハがよく似合う。
塑像モデルが相応うと言えば、そんな気もする。頼まれ仕事は断らないだろう。
与謝野晶子に「きんぎょのおつかい」という童話があるが、その挿し絵、金魚が立って歩く姿を想像してしまう。

歌をみると「・・・ふ魚村晋太郎通ふ・・・」が目につく。魚村晋太郎通(ファン)が金魚に餌の「ふ」をあげているように見えてくる。ふふふ。

『胡瓜草』については、いずれじっくりと。

短歌人9月号 同人のうた

2011-09-01 00:40:07 | 短歌人同人のうた
おとなしく目をみひらきて餓死せりけり青き紗をもてその目を隠す
(酒井佑子)

樹の咲ける花のふちよりふうはりと蛍流れて寂しき夏ぞ
(大谷雅彦)

床の上(へ)の桐箱の紐ほどけるをああくちなはに見ゆるまで病む
(青輝翼)

東北の人はがまん強いと書かれるを東北のひとはげしく嫌へり
(山寺修象)

バラ園に驟雨来たりて遠く近く花より明るき傘のひらきつ
(木曽陽子)

未完なる世界であればいくらでも挿入できる物語がある
(高野裕子)

故郷に似たる町角ハングルの看板あふれ立葵咲く
(林悠子)

ふるさとはフクシマと書かれ人住めぬ土地としてチェルノブイリと並ぶ
(紺野裕子)

人間の手に汚されてゆく地球孫がも一人欲しいと言へぬ
(山下柚里子)

眠りおる母の時間はゆききする昭和の父に逢いにゆくらし
(水谷澄子)

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短歌人9月号。同人1欄から。