気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

鴇色の足

2004-11-12 19:16:49 | つれづれ
犬の世話し炊事洗濯しジョギングし稿一つ仕上ぐ妻子(つまこ)はパリか

(奥村晃作 「鴇色の足」)

奥村先生 ご苦労さまです。

渡辺のわたし

2004-11-11 01:32:09 | つれづれ
わたくしの代わりに生きるわたしです右手に見えてまいりますのは

このうたでわたしの言いたかったことを三十一文字であらわしなさい

牛の肉おなかいっぱい詰め込んで海原をゆく船に手を振る

(斉藤斎藤「渡辺のわたし」ブックパーク)

話題の斉藤斎藤さんの歌集から三首。
自分をそして物事を、どんどん突き放して見る目を持っている人。


蒼の重力

2004-11-10 14:06:42 | つれづれ
天地(あめつち)の目合(まぐはひ)とこそ思はめや真夏の山の雪崩の叫(おら)び

ああやはり日本人だなさりげなく見て見ぬふりをして目が合ひぬ

まほろばの吸ひつくやうな肌かなうまさけ三輪の春の空気は

ひっひっふー、ひっひっふーと整ふるパッヘルベルのカノンの呼吸

ふかぶかと妻の送りし大波を乗り切つて吾子空気にむせぶ

(本多稜歌集『蒼の重力』本阿弥書店)

旅行詠登山詠職場詠家族詠…なんでもうまい。
スケールが大きいこれぞ「男うた」
「ひっひっひふー」「ふかぶか」は出産の歌でしょうが、男性の詠む出産の歌をはじめて読んだ気がしました。




茅渟海の光

2004-11-08 17:05:54 | つれづれ
あの時にすすめてもらってよかったと喜ぶ日待たん銀行員と
(森本智江歌集『茅渟海の光』ながらみ書房)

昨日(11月7日)は短歌人関西歌会でした。
23人の詠草(無記名)について、3時間の熱い意見交換のあと恒例の勉強会。
今回のテーマは「現在の男歌、女歌」。谷口龍人さんの資料をもとに、それぞれが限られた時間に思うところを話しました。久しぶりの大谷雅彦さん鹿児島より久保寛容さん三重県の水田まりさん新人の堀口澄子さんの参加もあり、活発な会となりました。
森本さんは欠席で残念でした。

短歌人の先輩、森本智江さんは、私の亡くなった母と同年代。今年、歌集を出されました。
きのうの会に森本さんがおられたらどんな意見を言われただろう、ほかの人の言葉をどういう風に聞かれただろうと思いました。

つれづれ

2004-11-07 02:37:43 | つれづれ
くちびるをアヒルのかたちにするために整形せしとやメグライアンは

売り出しのお笑いドランクドラゴンのメガネの鈴木は長の子に似る

売り出しのお笑いドランクドラゴンの塚地は丸顔吉岡さん似

松坂も田臥も 逝きし香田氏も二十四歳わが長の子も

たそがれのウド鈴木より鈴木拓何が作為か無為か知らねど

こころ覚え(14)

2004-11-06 21:33:54 | こころ覚え
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり
(岡本かの子 「浴身」)

千里万博公園のシンボル太陽の塔は、岡本かの子の愛息岡本太郎の作品。
この塔の腕の広げ方が「いのち一ぱい」に呼応して見えます。

こころ覚え(13)

2004-11-05 19:41:04 | こころ覚え
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
(佐佐木信綱 「新月」)

雲に収束していく歌として美しい。私の愛唱歌です。

そらみつの大和の国を訪ふときの近鉄特急おしぼりを出す
(近藤かすみ 短歌人2004年11月号)




感謝感想(もしも題詠マラソンがなかったら)

2004-11-04 20:20:38 | 題詠マラソン2004
昨年につづき、今年も題詠マラソンに参加して、よい経験をさせていただきました。
五十嵐きよみさん、水須ゆき子さん、萩原裕幸さん、兵庫ユカさん、スタッフのみなさま、おつかれさまでした。本当にありがとうございました。

10月末の三日間ほど、私も「ランナーズ・ハイ」の状態を味わいました。
どんなことになるのだろう?知り合いの○○さんにはぜひ完走してほしい…
こんなにたくさんの短歌を一気に読めるなんて、すごく贅沢なことでした。
ちょうど角川短歌賞の発表号を入手したこともあって、縦書き横書き両方で
勢いのある短歌を堪能しました。

とにかくスタッフの方のご尽力に頭が下がりました。
投稿歌をなかなか読みすすまないので、パソコンの前にメモを置いて、
何番まで読んだか記録していましたが、最後の一週間ほどは、それがどんどん増えました。

お題についてですが、
「オルゴール」「捨て台詞」「抱き枕」はそれだけで5音になります。
「家元」「坩堝」「木琴」「絶唱」はイメージの強い言葉で、ワンパターンに
嵌らないために、悩ませられる題でした。
ほかの人の作品に「題またがり」を見つけて、こういう手もあるのかと、
私も挑戦しました。こういう機会でないと、絶対に詠めなかった歌だと思います。

題詠マラソンに参加しなかったら、横書きでなかったら、
詠まなかったであろう歌を選んでみました。
別の見方をすれば、題詠マラソンを知らない人には理解できない歌かもしれません。

045:家元
両親の仕事は元画家元モデルいまはスナック経営らしい
055:日記
だれにでも裸体をさらすマネキンのやうな日記をまた読みに行く
060:とかげ
身のうらのやはらかき肌を玻瑠窓にゆるすとかげよALL YOU NEED IS LOVE(愛こそはすべて)
080:縫い目
子の衣の綻び繕ふ三ヶ島の葭子の手なるちひさき縫ひ目
090:木琴
放課後の木琴鉄琴手風琴春琴慕ふは温井佐助ぞ
099:絶唱
枕辺に迦陵頻伽のあらわれて絶唱みちびく春のゆふぐれ
100:ネット
赦されてうは言を百つぶやきぬ魔法のネットに囚はれしのち

ほかの参加者の作品で心に残った歌は、たくさんありすぎて・・・
これからまたゆっくり読んでみます。

(画像は山科真白さんのサイトからお借りしました)