気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

題詠マラソン2005(98~100)

2005-11-29 20:47:55 | 題詠マラソン2005
098:未来
未来きつと明るいと言へば言霊はさう言ふひとの明日を照らすか

099:動
ひとりバスに旅の心算(つもり)で乗りたれど隣りの女の口よく動く

100:マラソン
マラソンの果てのたそがれ横書きの歌にオヤスミ とつぴんぱらり

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11月末が題詠マラソン2005の感想の〆切なので、大急ぎで自選と心に残った歌を考える。膨大な歌。宝の山がここにある。

・題詠マラソンに参加したことについての感想

今年で三回目の参加です。例年どおり「一日一首以上出さない」という自己ルールで、少しずつ進みました。最初のころ、いままでから知っている参加者が、テーマを決めて早い時期に終ってしまわれたことに驚き、あせりました。私は私のルールで、押し通すしかないと、テーマも特になく行き当たりばったりで進みました。作ったときのことを思いだせる歌もあって、それはそれで良かったと思っています。

・「ルール」など、マラソンの運営方法についての感想や提案

これは五十嵐きよみさんはじめ、スタッフのみなさまを信頼してお任せしています。大変な作業だと思います。ありがとうございました。

・難しかったお題、面白かったお題など、お題についての感想

じゃがいも、探偵、胸騒ぎ、官僚・・・意外と一字の題に苦しみました。
 
・自選

大空を見上ぐる瞳その数とおなじ数だけある空の色
春の日は鞄を置いて中年よ!妻子を抱け壊れぬうちに
触れられてその身を閉づる眠り草ひと去りしのち身をひらきをり
義理チョコより友チョコだつてさこれからは女が女にやさしくする世
教室の窓辺にをりしは佐野朋子うはさに高き座敷わらしの
顔文字で照れて笑つて汗をかく世界がときどき馬鹿らしくなる
迷信を肯ふ人は理屈言ふひとより大人と知りぬこの頃
「科学的根拠」に護られ罪人と狂人のあはひ茫漠となる
何もかも揃はぬと怒るパソコンがインクを買ひに行けと夜更けに
計画を立てる計画スタジオの鏡の奥の奥までわたし

旧かなという縛りがあるだけで、今はなんでもやってみようと思っています。
人の作品をたくさん読むことで、どんどん自分を変えてゆけたら幸いです。

・心に残った歌について

019:アラビア 大辻隆弘
廉価版塚本邦雄集の背のほつれアラビア糊もて糺す
098:未来 村本希理子
ゆつくりと未来が落ちてゆくみたいパタパタ時計の零しゆく今
094:進 ひぐらしひなつ
頬杖のまま聞いていた進化論あなたの耳のかたちを好きで
038:横浜 櫂未知子
横浜のアイスクリンはとけながらいろいろ思ひ出せといふのよ
008:鞄 伊波虎英
さかさまに鞄をふればしろがねのゼムクリップ出づ泣けとばかりに
015:友 春畑 茜
友好のために上野を出でゆけぬパンダ真昼を笹食むばかり
015:友 荻原裕幸
西友のかたちにいつも切りとられそこだけ蜜を見せぬ黄昏
041:迷 五十嵐きよみ
「迷」の字がゆるゆる動く気配してガラスケースを這う蝸牛
063:鬼 資延英樹
花水木しげる青葉の下闇の境港を鬼太郎がゆく
083:キャベツ 杉田加代子
臨月のキャベツが肩で息をする朝明の露にぬれた畑で

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ひと日にて題詠マラソン振りかへるムチャクチャでござりますわな そりや
(近藤かすみ)

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