気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

玄牝 高木佳子 砂子屋書房

2020-07-26 23:45:04 | つれづれ
舗道(いしみち)はしまし光を折らしめて影を濃くするけふの暑さに

除くことはできぬしづかな諦めが昼闇としてそろりと覆ふ

それぞれの重みに砂は耐へかねて己をすこしくぼませてゐる

幼年の祈りたやすく右の手は左の手に来て陽へのおいのり

真実といふはあやふし山梔子は山梔子の花と識るとき匂ふ

このくにと叫ばるるときわが痛む罅荒れはあり このくにとは何

木犀の花殻つよく匂ひけり樹を離れてをのちの時間を

紙白く桃を包めばつつまれて桃はこの世にあらざるごとし

齧り終へし林檎の芯がエンタシスの柱の象に見えてくるとき

土を搔き土を悼みてひと日づつこの地を生きむとする人がゐる

柳清香とかつてはいひしポマードを父も使ひしと話せば匂ふ

(高木佳子 玄牝 砂子屋書房)
*******************************
第三歌集。高木佳子さんの歌は格調高い。旧かな文語で、しっかりと詠われている。読むのに体力が要るが、手ごたえは強い。わたしは高木さんの歌を「震災読み」していた時期があった。この歌集では震災色を消そうと相当考えられたのかと感じた。

最新の画像もっと見る