舗道(いしみち)はしまし光を折らしめて影を濃くするけふの暑さに
除くことはできぬしづかな諦めが昼闇としてそろりと覆ふ
それぞれの重みに砂は耐へかねて己をすこしくぼませてゐる
幼年の祈りたやすく右の手は左の手に来て陽へのおいのり
真実といふはあやふし山梔子は山梔子の花と識るとき匂ふ
このくにと叫ばるるときわが痛む罅荒れはあり このくにとは何
木犀の花殻つよく匂ひけり樹を離れてをのちの時間を
紙白く桃を包めばつつまれて桃はこの世にあらざるごとし
齧り終へし林檎の芯がエンタシスの柱の象に見えてくるとき
土を搔き土を悼みてひと日づつこの地を生きむとする人がゐる
柳清香とかつてはいひしポマードを父も使ひしと話せば匂ふ
(高木佳子 玄牝 砂子屋書房)
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第三歌集。高木佳子さんの歌は格調高い。旧かな文語で、しっかりと詠われている。読むのに体力が要るが、手ごたえは強い。わたしは高木さんの歌を「震災読み」していた時期があった。この歌集では震災色を消そうと相当考えられたのかと感じた。
除くことはできぬしづかな諦めが昼闇としてそろりと覆ふ
それぞれの重みに砂は耐へかねて己をすこしくぼませてゐる
幼年の祈りたやすく右の手は左の手に来て陽へのおいのり
真実といふはあやふし山梔子は山梔子の花と識るとき匂ふ
このくにと叫ばるるときわが痛む罅荒れはあり このくにとは何
木犀の花殻つよく匂ひけり樹を離れてをのちの時間を
紙白く桃を包めばつつまれて桃はこの世にあらざるごとし
齧り終へし林檎の芯がエンタシスの柱の象に見えてくるとき
土を搔き土を悼みてひと日づつこの地を生きむとする人がゐる
柳清香とかつてはいひしポマードを父も使ひしと話せば匂ふ
(高木佳子 玄牝 砂子屋書房)
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第三歌集。高木佳子さんの歌は格調高い。旧かな文語で、しっかりと詠われている。読むのに体力が要るが、手ごたえは強い。わたしは高木さんの歌を「震災読み」していた時期があった。この歌集では震災色を消そうと相当考えられたのかと感じた。