囁くと書けば寡黙な耳三つ口に寄り添ひ聞耳立てる
(古川アヤ子)
ゼブラゾーンの人・人・人はみな他人青信号が点滅し始む
(立花みずき)
消しゴムで履歴のすべて消すやうに上履きをまづ帰りに捨てる
(西橋美保)
ベビーカーに赤子は眠りちょうどいま辛夷のはなびら散る下を行く
(猪幸絵)
百の嘘百の真実今はただ桜吹雪を見ているばかり
(山本栄子)
通りゃんせここは踏み絵を踏むようで左に立ちますエスカレーター
(𠮷岡生夫)
みどり児を抱えて若き父と母くぐる茅の輪の茅匂いたり
(平野久美子)
のたりと座る上野のパンダは中華人民共和国そのものの形
(今井千草)
父のため供花一束をあがなへば抒情の嵩が吃水線越ゆ
(大森益雄)
亡き妻にきたりし運転免許証更新のしらせしばらく見つむ
(小池光)
***********************************
短歌人6月号、同人1欄より。
(古川アヤ子)
ゼブラゾーンの人・人・人はみな他人青信号が点滅し始む
(立花みずき)
消しゴムで履歴のすべて消すやうに上履きをまづ帰りに捨てる
(西橋美保)
ベビーカーに赤子は眠りちょうどいま辛夷のはなびら散る下を行く
(猪幸絵)
百の嘘百の真実今はただ桜吹雪を見ているばかり
(山本栄子)
通りゃんせここは踏み絵を踏むようで左に立ちますエスカレーター
(𠮷岡生夫)
みどり児を抱えて若き父と母くぐる茅の輪の茅匂いたり
(平野久美子)
のたりと座る上野のパンダは中華人民共和国そのものの形
(今井千草)
父のため供花一束をあがなへば抒情の嵩が吃水線越ゆ
(大森益雄)
亡き妻にきたりし運転免許証更新のしらせしばらく見つむ
(小池光)
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短歌人6月号、同人1欄より。
なんでもないことなのだが彼にとっては複雑な思いだろう。この普通事を心理を綾に語って平凡ならざる歌にしている。愛する妻が生きていたら人生をも運転していただろうに、夫と伴に。
小池さんの歌は、心ひかれる歌ばかりで、どれか一首を選ぶのに悩みます。