気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

アネモネの風 渡辺茂子 不識書院

2021-06-19 12:21:45 | つれづれ
アネモネは未知の風です いつもゆくシニア割引顔パスランチ

われの作るバッグはいつもアシンメトリー少し世の中斜めに生くる

今少し歌を紡ぎて老いゆかむ むべなるかなや残照日記

耳朶深く残りてあらむひぐらしは夢のなかにも羽ふるはする

時々はひとりとなりて湖辺(うみべ)とふやさしき語彙に影と歩めり

手のひらに光零して飛びゆけるほうたるかなしみの遠景として

駅までを抜きてゆきたる幾人か皆美しき背(せな)そよがする

『渡辺のわたし』とふ歌集見たし渡辺となり幾とせ経たる

すれ違へど気づかぬは良しマスクしてめがねを掛けて帽子かぶりて

雑然としたる脳(なづき)のこころよさ整然はときにわれを苛む

(渡辺茂子 アネモネの風 不識書院)

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「覇王樹」同人の渡辺茂子氏の第三歌集。学生時代から始めた短歌を続けてはや半世紀とあとがきにある。教師を退職後の暮らし、歌友との交流、手芸、孫の様子が端正な文体で描かれる。渡辺さんは、もっと外れた生き方をしたかったのかもしれない。しかし、結局収まるべきところに収まるものなのだろう。短歌作品と実人生の重なりは何割くらいだろうか。考えてしまった。

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