気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

モディリアーニの絵の女の気分 村上康子 本阿弥書店

2021-04-11 01:52:55 | つれづれ
好きなものペペロンチーノ猫の髭青い背広のあなたの匂い

字あまりのような夜九時てのひらに金平糖がころがっている

わたくしをはみだしてゆくわたくしに短歌たんかと錘を置きぬ

くしゃくしゃとまるめた紙が二度三度身ぶるいをする春の夜更けに

箸をふり国のゆくすえ説くあなた早くごはんを食べて下さい

米二キロ子猫のころの重さにて老いたるのちの死の重さなり

ごはんよと夢に呼ぶ子は四十の息子にあらず五歳の息子

地下書庫より汲み上げられて一葉は予約の棚にわれを待ち呉る

予定あれば予定の日まで死なないとそんな気がする 予定を入れる

とりどりの手づくりマスクが町を行く日本のおみな強しかわゆし

(村上康子 モディリアーニの絵の女の気分 本阿弥書店)

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ポトナム所属の村上康子さんの第一歌集。同年代の女性の歌集なので、親近感が湧き一気に読んでしまった。専業主婦として家族の中で確かな役割を果たしつつ、熱心に短歌に取り組む様子が読み取れる。しかし、ここに書かれたことは現実とどのくらい重なっているのだろう。重なると読んでいいのだろうか。自らの人生と比べて複雑な気持ちになった。

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