気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人3月号 3月の扉

2011-03-02 18:06:49 | 短歌人同人のうた
現し世は永久(とは)に未来のなき死者の置き忘れたるビニールの傘
賀状とふ矩形の月に野兎を閉ぢ込めながら新年を待つ
元朝の神の吐血の乾(ひ)るごとくポインセチアのくれなゐ翳る
(伊波虎英 DIES IRAE(3))

久仁子とふ落書きのありて十年ののちもわたしの居るべき処
たのみゐし熱燗一合それぞれに手酌に呑むとふことのやさしも
カウンターの端とり眺む客なべて入り江にしばし漂ふ小舟
(平居久仁子 折鶴会館)

線香の匂いながるる食卓に呑むはずの薬三包ありぬ
幸せは淋しくないこと 言ったよね夕さりに立ち家族が好きと
降り注ぐ冬のひかりの屈折を遺品の硝子ブローチに見ゆ
(梶田ひな子 やさしさの重さ)

竹群の中つき当りつき当り雀が一羽、羽撃き出づる
家棟(やむね)囲む木々のさまざま縄梯子掛けて興じゐし子らの面影
ブランコの縄の切れ端 草生より見えつ隠れつ活き活きと過去
(山崎喜代子 活き活きと過去)

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短歌人3月号、3月の扉から。

伊波さん。題はドイツ語だろうか。よくわからない。年越しの風景であるが、作者独自の視点で詠われていて、ありきたりでない。「正月はめでたい」というような固定観念から離れて、個性的な歌をどんどん作ってほしい。

平居さん。題から結婚式場のような場所を想像したが、飲み屋が数軒集まったところのようだ。平居さんとは、関西歌会でご一緒し、二次会でもお酒、特にワインがお好きなようだが、意外な一面を見た気がする。私の知らない世界のことを聞いてみたい。

梶田さん。お姑さんが急死されたのだろうか。二首目の「言ったよね」の口語が効いている。「家族が好き」というような言葉を久しぶりに聞くような気がした。私たちは、一体何のために生きているんだろうと、問われている。

山崎さん。家の周りの木に縄をかけて遊びに興じた子供さんたちも、大人になって独立されたのだろう。身につまされる一連。過去は輝かしく、ときには今の私たちを慰めてくれ、また涙を流させる。



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