気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-03-18 00:52:27 | 朝日歌壇
ちっぽけな豊かさに未練があるのかと加藤登紀子の古きテープに
(埼玉県 吉野ミヨ子)

話しかけるわれより国会中継が大事な夫は声をさえぎる
(沼津市 森田小夜子)

その昔ユトリロ愛する人と居て耳の形を忘れずにいる
(金沢市 西出佳子)

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一首目。加藤登紀子は、私より少し世代は上だが、東大出の歌手として一世を風靡し、その後も長い人気を保っている。赤い風船、知床旅情、ひとり寝の子守唄などヒット曲は多い。私は「灰色の瞳」が好きだ。彼女の生き方を支持し、羨む女性も多い。この作者が聴いたのは、何の歌だったのだろう。テープというのも、今となっては、懐かしいツールだ。
二首目。共感できる歌。男の人より女の方がおしゃべりなのか、妻の多くは、夫に話しを聞いてもらえないという不満を持っている。何気ない言葉のキャッチボールをしたいのに、それも叶わないのは夫婦としてさみしい。それで、夫婦の会話をあきらめて趣味に目覚めたころに、濡れ落葉になって纏わりつかれたら、うんざりする。ふだんから、ちょっとした会話を楽しめる夫婦でいたいのだが、現実はきびしい。一番いいたいことを言わずにほのめかせるのが良いらしい。疲れる。
三首目。ユトリロを愛する人を愛する作者という二重構造の歌。間に具体として、耳の形がうまく入っている。

わたくしの話しを聞かぬ老い馬はときをり鼻をふふんと鳴らす
(近藤かすみ)


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2 コメント

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「灰色の瞳」 (佐山みはる)
2008-03-18 21:33:26
私も好きでした。昔買った「灰色の瞳」のEPが、まだ実家にあります(^^)

題詠2007鑑賞で、かすみさんのお歌を10首選ばせていただきました。
お時間がおありのとき、おいでください。
的外れのコメントがあると思いますが、お許しくださいねm(__)m
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Unknown (かすみ)
2008-03-19 00:25:24
佐山みはるさま
そちらのブログの鑑賞を見てきました。ありがとうございました。決して的外れじゃないので、自信を持ってください。

加藤登紀子の経営しているロシア料理のレストランが京都にあって、以前行ったことがあります。ロシア人(だと思う)歌手の歌を聴くことも出来ました。あれはもう随分前のことです。この頃、むかし行った店などの前を通るとそのころのことが思い出されて、無性に懐かしくなってしまいます。
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