気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

The Blue  香川ヒサ歌集 つづき 

2012-06-02 23:30:12 | つれづれ
岩山を見れば建てたくなる城の立てるを見れば壊したくなる

私の見てゐない時羊らは羊そのものとして在るのだらう

宮殿の庭に必ずゐる孔雀ここにもをりて宮殿である

いく千年働き続けし人類の先端に麦を刈る人の見ゆ

八方を望める丘の上に見る丘の下では見えぬ風景

朝の日が満つる車内を縦横に電波飛び交ふ飛び交ふ見えねど

人々は死ぬほど踊る先駆けて死より己を取り戻すのだ

閉ぢられてゐる時もつとも怖ろしく聖書が置かる説教台に

教会の影は芝生を移りつつこの公園から出ることはない

往く人の影は芝生を移りつつこの世界から出ることはない

(香川ヒサ The Blue 柊書房)

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いままでから馴染んだ香川ヒサ調の歌を読んでいると、私は気持ちが和む。当たり前すぎて、だれも注目しないようなことを歌にするのが、特徴的。
わたしがこの歌集の中で一番気に入ったのは「閉ぢられてゐる時もつとも怖ろしく・・・」の歌だ。

何冊もの歌集を買ったり頂いたりして読むが、相性のよい歌集とそうでない歌集がある。だれにでもわかりやすく共感される歌集が、優れた歌集とは言えない。よく歌会などで出る「好みの分かれるところ」が確実にある。
右顧左眄するのではなく、だれが何と言おうとわが道を行く人が、最後には一番強いのだとこのごろ思う。

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4 コメント

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香川さん、 (teruo)
2012-06-21 17:30:24
立ち位置のしっかりした聡明なひとが和むことがあっても、そうでないひとはもっと落ちていきそうで「かんべんしてくれよ」と困ります。
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Unknown (かすみ)
2012-06-21 19:53:32
teruoさん

香川さんの歌は、ほんとに好みの分かれるところです。いままでだれも詠まなかった歌を詠んだという点で高く評価されています。
現実にもよく知っていますが、親切で元気があって、私は大好きです。
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Unknown (tamaya)
2012-06-22 08:16:28
遅ればせコメントでごめんなさい。僕はこの歌集はまだ読んでいないのですが、かすみさんのご紹介記事を読んで、これまでの香川さんの作品世界が大きく転回した、というようなことではないんだろうな、と思いました。
先週の「詩客」の短歌時評で、田中濯さんがこの歌集について書かれていました。
http://shiika.sakura.ne.jp/jihyo/jihyo_tanka/2012-06-15-9355.html
僕は香川さんの作品とは波長が合うところがあるのですが。それでもこの田中さんの辛口の評をうなづきつつ読みました。
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Unknown (かすみ)
2012-06-22 09:41:19
tamayaさん

詩客の記事は、私も読みました。田中濯さんは論客ですね。tamayaさんももちろんそうですが・・・。
私は、短い文章しか書けません。これも個性ということで勘弁してください。
香川さんは、両方できる人ですね。
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