気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-04-22 00:07:03 | 朝日歌壇
「後期高齢者」言わしておけば言うものぞ奮然として春の雪掻く
(伊那市 小林勝幸)

死ぬ前の母がぼんやりわれを見てやがて二つの瞼閉じたり
(坂戸市 山崎波浪)

人間を知りたいふうな丸い目で鳩がおりおりテラスを覗く
(熊本市 高添美津雄)

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一首目。ここしばらく「後期高齢者」の歌が、ものすごく多い。選ばれて掲載される分にもこれだけあるのだから、投稿される歌は相当な数だと想像できる。この歌は後期高齢者と呼ばれることを嘆くのに留まらず、奮然と雪掻きまでしてしまう勢いが良い。そんなに元気なのになんてひどい呼び方!と読む者も納得する。
二首目。事実を飾りなく書いたものには、何者も勝てないと感じる。初句の「死ぬ前の」がややひっかかるのだが、結果として、あのときがそうだったと思い当たるのだろう。
三首目。物事の主体は人間にあると考え勝ちだが、鳩もこちらを見て、何か思っているのかもしれない。「知りたいふうな」の「ふうな」という表現を短歌で見たのは、めったにないことだ。ふだん使っている言葉なのに、盲点を突かれた思いがした。

身のうちに首を埋めて目を閉じる鴿の群れに朝日は当たる
(近藤かすみ)


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