雛芥子はらりと散りてあへなし断念もかくあらばひと苦しまざらむ
すこしづつ世を退(すさ)ることおもひゐる ほらもう桜もあんなに散つて
落つるほかなき成り行きもて瀧みづの砕くるあたりありなしの虹
永かりし責(せめ)をおろして来む年のためえらびゐる子(ね)の縁起もの
ひとつとて去年と同じき花なきにまた逢ふさくらのうら懐かしさ
越えてよかりし越えでよかりし境目のいくつか長き一生(ひとよ)にありぬ
よごれても枝をはなれぬ白梅の意地もまたよし散るまでは花
(蒔田さくら子 翡翠の連 角川書店)
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『翡翠の連』から、いまの季節にふさわしい歌、好きな歌を引いてみた。
歌の底にはどれも人生を見つめる目がある。
四首目は、短歌人の編集委員を辞められたときの歌だろう。責に「せめ」とルビをふってあることに、重さを感じた。時間もエネルギーも、さまざまなものを短歌人会のために費やして来られた先輩の思いを裏切ることのないよう、小さな力であっても出来ることをしなければいけないと思う。
週末に出かけているうちに、高野川沿いの桜もかなり散って葉桜になってしまった。
葉桜も好きなのだけど。
莟から葉桜になる朝(あした)まで一本の樹を見つくしてゐる
(近藤かすみ)
すこしづつ世を退(すさ)ることおもひゐる ほらもう桜もあんなに散つて
落つるほかなき成り行きもて瀧みづの砕くるあたりありなしの虹
永かりし責(せめ)をおろして来む年のためえらびゐる子(ね)の縁起もの
ひとつとて去年と同じき花なきにまた逢ふさくらのうら懐かしさ
越えてよかりし越えでよかりし境目のいくつか長き一生(ひとよ)にありぬ
よごれても枝をはなれぬ白梅の意地もまたよし散るまでは花
(蒔田さくら子 翡翠の連 角川書店)
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『翡翠の連』から、いまの季節にふさわしい歌、好きな歌を引いてみた。
歌の底にはどれも人生を見つめる目がある。
四首目は、短歌人の編集委員を辞められたときの歌だろう。責に「せめ」とルビをふってあることに、重さを感じた。時間もエネルギーも、さまざまなものを短歌人会のために費やして来られた先輩の思いを裏切ることのないよう、小さな力であっても出来ることをしなければいけないと思う。
週末に出かけているうちに、高野川沿いの桜もかなり散って葉桜になってしまった。
葉桜も好きなのだけど。
莟から葉桜になる朝(あした)まで一本の樹を見つくしてゐる
(近藤かすみ)
何かの折に昔の和歌に触れるくらいで日頃ご縁のない作歌の世界ですが、このような皆さまがたのご努力あってのそれぞれの伝統と、かすみ様のお言葉もお読み致しまして感銘を受けました。
写真というのは蒔田さんの写真ですよね。
短歌人4月号(70周年記念号)には、蒔田さんのインタヴュー記事があり、短歌人会の歴史がわかります。ぜひご一読を。