気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人3月号 同人のうた その3

2016-03-20 23:17:27 | 短歌人同人のうた
そつと出す人差し指がふるへたり指紋認証の如月の冷え
(澤志帆)

「いつかまた」言い切れないで左様なら濡れているのは左の翼
(倉益敬)

ひさびさに男の涙と出合ふなり「下町ロケット」テレビの話
(竹浦道子)

朝の陽が照らす家々いづれにも人棲みてをり何処ゆく電車
(大森浄子)

仁丹の匂いをさせて吊り革を持つ紳士あり昭和のおとこ
(川島眸)

大き柚子風呂に投げ込むそれだけで異郷のごとき夕暮れがくる
(藤本喜久恵)

枇杷の花ほのかに白し死ののちを漱石の脳の量られてあり
(渡英子)

屋根裏にもはや読まざる文庫本『マルテの手記』が置かれていたり
(藤原龍一郎)

五十音谷村田村となりあい会のひと日をすごした幾度
(谷村はるか)

ラッパ手の木口小平の享年は日清戦争のさなか二十二歳(にじふに)
(大森益雄)

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短歌人3月号、同人1欄より。

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