気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-10-07 17:47:29 | 朝日歌壇
『蟬声』がブックエンドに寄りて立つ書架に初秋の斜めのひかり
(神戸市 林田ふく)

仰ぎ見れば睫毛(まつげ)美人のキリンにてその睫毛より秋の風吹く
(茨木市 瀬川幸子)

「ききょう」とふ銘柄なりし亡き父の刻みたばこの紫の花
(武蔵野市 中村偕子)

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一首目。『蟬声』は河野裕子の最後の歌集。さみしさが襲ってくるような感じがする。結句の「斜めのひかり」に救いがある。「斜め」がうまい。本の名前を歌に入れると、その本のイメージ全部が立ち現われる。どの本を選ぶかは、ものすごく大事だ。
二首目。睫毛美人のキリンとは、目の付け所が面白い。ラクダなどもそんな感じだ。下句で、「秋の風吹く」として季節感と爽やかさが出た。
三首目。こういうレトロねたに弱い。子どものころに住んでいた家は、タバコ屋の角を曲がって○軒目だった。父親のお使いでよく煙草を買いに行かされて、ショーケースに並んでいるほかの煙草も、見るともなく見ていた。この作者は「とふ」を使っているので旧かなの作者と思われるが、実際に検索して写真を見ると「ききよう」となっている。ここだけ現実に即して新かなになったのだろう。

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