気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2014-05-05 22:45:37 | 朝日歌壇
ふるさとを離れしわれの転居地を母の遺しし住所録に数ふ
(町田市 高梨守道)

鶴の湯の廃業決まり明日よりは東京の富士またひとつ減る
(東京都 上田国博)

四時半に「夕やけ小やけ」が鳴る街のどこかに私隠れています
(坂戸市 山崎波浪)

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一首目。「母の遺しし」の「遺」の字で、作者のお母さまは亡くなられたことがわかる。転居する人は、どこからどこへ転居したかわざわざ記録に残さないだろうが、母の住所録にはちゃんと記録が残っていた。住所録から、母と子の軌跡がわかるようだ。
二首目。銭湯には富士山の絵が付き物のようだ。それがまた一つなくなる。四句目の「東京の富士」は奇妙だが、ハッとさせる言葉。初句の「鶴の湯」から銭湯だとわかる。短歌では四句目が大事だというのを、改めて思う。
三首目。上句のような街はあちこちにあるだろう。下句の、ちょっと謎めいた丁寧な表現が魅力。「います」という言い方が、幼いようであり、ちょっと改まったようであり、効果を上げている。

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