気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

茶色い瞳 今井聡 六花書林

2022-02-10 23:27:59 | つれづれ
曇天の秋の広場の陶器市器(うつは)は内にみな陰持てり

見るのみで雲の手触り知らぬのにふかふかと言ひふはふはと言ふ

一枚の玻璃を挟みてそれを拭く男とわれと生計(たつき)ちがへり

草食系男子ならんやとからかはれし日の夜めし屋の牛めしを食ふ

ウクレレをゆつくり弾けば板橋区蓮根(はすね)歳末の日がくれてゆく

ひと時のたのしみとしてこの星に来たのと語るをんなありたり

世の中ゆはみ出しし者のわれら二人「お互ひさま」と君はいひくれき

買ひてきて活けたりしろきかすみ草ひとりの部屋のともしびとなれ

寝転びておやつに食はむ大福のしろきをおもふ餡の甘きも

意を決し飛びたるかなや羽根拡げ滑空をせり鳥影孤(ひと)つ

(今井聡 茶色い瞳 六花書林)

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コスモス短歌会の今井聡の第一歌集。今井さんとは奥村晃作氏のメール歌会で長くご一緒し、お世話になっている。奥村さんの歌に「真面目過ぎる「過ぎる」部分が駄目ならむ真面目自体(そのもの)はそれで佳(よ)しとして」があるが、今井さんはこの通りの人だと思う。旧かな文語に執着するスタイルが、ほのかなおかしみを醸し出している。真面目な人間は、ときにそれをからかわれるものだが、理解しあえる伴侶を得られたようで、こちらも嬉しくなった。

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