気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2010-09-06 22:09:01 | 朝日歌壇
失業し金がないから棚経を読みに来るなと電話のかかる
(三原市 岡田独甫)

裕子さんゆうこさんホオズキ朱(あか)く色づきし夏の最中の悲しき訣れ
(富岡市 森平恵子)

パンの耳捨てしを恥じぬみみだけで一日生きしとふ歌人いづくに
(成田市 神郡一成)

*****************************

一首目。事実そのままを歌にした即物的な短歌だが、訴えるものが大きい。最近、ニュースで知る高齢者の行方不明や遺骨発見の端緒は、ここにあると思った。
二首目。先月亡くなられた河野裕子さんへの挽歌。選歌をされる永田和宏さんも、評の欄にご自分の思いを書いておられた。河野裕子さんは、それだけ多くの人に愛された歌人だった。歌としては、初句が呼び掛けになっていて十音。「裕子さん」一回だけなら、五音で定型に納まるが、ここは二度呼ばずに居られなかった思いで十音になっている。結句の「悲しき」も、歌会などでは「言い過ぎ」と批判されるところだが、悲しいんだから、それを言っても当然だろう。定型に納まらない思いが、裕子さんの挽歌にふさわしい。

三首目。これは、ホームレス歌人として朝日歌壇で話題になり、その後消息のわからなくなっている公田耕一さんのことだろう。ネットで調べると、
2009年1月5日に「パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる」という歌が掲載されている。

九月に入っても治まらない暑さ、根の深い不景気、いやな予感がして仕方がない。

最新の画像もっと見る