才能も処世の術もうとくして乗換駅の地下に戸惑ふ
（小川潤治）
一人（いちにん）を盆に送りて桐下駄の柾目正しく玄関にあり
（松圭子）
廃業の鉱泉旅館の看板を覆へる葛にあかきはなさく
（庭野摩里）
どれだけの人を向こう岸に運んだか赤川鉄橋帰りたくない
（川島眸）
そそぐ水たちまち乾く盂蘭盆の墓石は怒りゐるかに熱し
（染宮千鶴子）
パントマイムの十指そよがせこの夏のむごき暑さにさよならをする
（木曽陽子）
綱渡りのような人生そろそろとそろそろときてここまでは無事
（𠮷岡生夫）
柿の葉に降りつぐ雨はほそほそと時間（とき）は素早く立ち去りてゆく
（大和類子）
きよらかな青みを帯びて雲うかぶ台風十八号去りたる空に
（小池光）
すずしさのよみがへりきて朝顔の季節の果ててゆくを知りたり
（宇田川寛之）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
短歌人１１月号、同人１欄より。
１１月号の締切は、９月１２日。まだ暑かった。それなのに、あっと言う間に秋はゆく。
ファンヒーターを入れている。日暮れが早い。
写真は、さねかずらの赤い実。季節の花３００のサイトからお借りしています。
（小川潤治）
一人（いちにん）を盆に送りて桐下駄の柾目正しく玄関にあり
（松圭子）
廃業の鉱泉旅館の看板を覆へる葛にあかきはなさく
（庭野摩里）
どれだけの人を向こう岸に運んだか赤川鉄橋帰りたくない
（川島眸）
そそぐ水たちまち乾く盂蘭盆の墓石は怒りゐるかに熱し
（染宮千鶴子）
パントマイムの十指そよがせこの夏のむごき暑さにさよならをする
（木曽陽子）
綱渡りのような人生そろそろとそろそろときてここまでは無事
（𠮷岡生夫）
柿の葉に降りつぐ雨はほそほそと時間（とき）は素早く立ち去りてゆく
（大和類子）
きよらかな青みを帯びて雲うかぶ台風十八号去りたる空に
（小池光）
すずしさのよみがへりきて朝顔の季節の果ててゆくを知りたり
（宇田川寛之）
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短歌人１１月号、同人１欄より。
１１月号の締切は、９月１２日。まだ暑かった。それなのに、あっと言う間に秋はゆく。
ファンヒーターを入れている。日暮れが早い。
写真は、さねかずらの赤い実。季節の花３００のサイトからお借りしています。
なんとも臆病な注意深い人生ではないか。なにかかなしきにくめない諧謔味がある。無事というところが人生平穏（じんせいへいのん）で幸せがある。病など大過なくやってこられたのであろう。かくいうわたしはほとんどが遊びの人生で死期おぼゆるころになって脳梗塞になってしまった。堕落なすぎゆきに天の鉄槌であろうか。
𠮷岡さんは、大病をされて復活されたと聞いています。いまはお元気なので、数のうちに入ってないのでしょう。𠮷岡さんの歌の魅力は諧謔味ですね。
小川さま、おだいじに。
完全な定型が歌の意にそってよいと思いました。
私も完全定型の歌、好きなのです。しかし、どうしてもはみ出したり、わざとはみ出したりします。好みの分かれるところですね。