画家となる夢を今更あきらめてウツボカズラに虫を喰わせる
パンジーの幾万本も廃棄されて週末明るい死で満ちている
見上げれば空一面に銀色の魚の群れが過ぎ行くところ
一秒前の姿を示す月面の光に揺らぐビーカーの水
農業に明日はあるかという問いに芋虫はただ黙秘で返す
アナログは終わりましたと表示され画面は青き空の広がり
わらび餅売る声遠く響きいる出荷間際に鳴く牛のごと
動物の本をめくれば猛獣の餌となるべき小鹿群れ飛ぶ
遺伝子の舟と呼ばれし肉体を今日も日暮れて湯船に浸す
鳥類に産まれることもできたのだ我が子の背なの産毛に触れる
(森垣岳 遺伝子の舟 現代短歌社)
***********************************
第2回現代短歌社賞を受賞した森垣岳の第一歌集を読む。
森垣さんは兵庫県で農業高校の先生をしている30歳代の方。人生がそのまま歌になり、歌集になったと読んでまちがいないだろう。
目次を見ると、栽培実習、生物工学、ビジネス基礎、発達と保育、などと学校の教科のなまえになっていて面白いと思った。
パンジー→明るい死、芋虫→黙秘、と言った発想の飛ぶ歌に魅力がある。遺伝子の舟の歌は、集題になり、彼の代表歌になるだろう。遺伝子の舟という観念が、下句の日常の叙情に繋がって心に残る。
パンジーの幾万本も廃棄されて週末明るい死で満ちている
見上げれば空一面に銀色の魚の群れが過ぎ行くところ
一秒前の姿を示す月面の光に揺らぐビーカーの水
農業に明日はあるかという問いに芋虫はただ黙秘で返す
アナログは終わりましたと表示され画面は青き空の広がり
わらび餅売る声遠く響きいる出荷間際に鳴く牛のごと
動物の本をめくれば猛獣の餌となるべき小鹿群れ飛ぶ
遺伝子の舟と呼ばれし肉体を今日も日暮れて湯船に浸す
鳥類に産まれることもできたのだ我が子の背なの産毛に触れる
(森垣岳 遺伝子の舟 現代短歌社)
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第2回現代短歌社賞を受賞した森垣岳の第一歌集を読む。
森垣さんは兵庫県で農業高校の先生をしている30歳代の方。人生がそのまま歌になり、歌集になったと読んでまちがいないだろう。
目次を見ると、栽培実習、生物工学、ビジネス基礎、発達と保育、などと学校の教科のなまえになっていて面白いと思った。
パンジー→明るい死、芋虫→黙秘、と言った発想の飛ぶ歌に魅力がある。遺伝子の舟の歌は、集題になり、彼の代表歌になるだろう。遺伝子の舟という観念が、下句の日常の叙情に繋がって心に残る。