気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

新しい生活様式 服部崇 ながらみ書房

2022-06-29 22:02:18 | つれづれ
窓の外を首から下の人たちが急ぎ足にて歩いてゆけり

めらめらを見たくてひとり紙を焼く冬の渇ける家にこもりて

坂道を登りきりたる先にある坂道を思ふ雨に打たれて

わたくしのことばを聞きて一斉に支持が遠のく ドロップ舐める

美容師はブローをしつつ曲がつたら知らない街に出てゐたと言ふ

いにしへのころより路は斑猫にしたがへばよし晴れてゐる日は

鍵を持つわたしがいつかやつてきて扉を開けてくれるだらうか

夕方の店の前にて立ち尽くすあんとみつとにのれんは割れて

日の当たる場所に置かれてぶら下がり健康器にぶら下がるシャツたち

目を閉ぢて開けばそこにあらはれてくれたりするといいのに小人

(服部崇 新しい生活様式 ながらみ書房)

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心の花所属の服部崇の第二歌集。服部さんとは神楽岡歌会と続きの飲み会でときどきご一緒していた。大学の先生とは聞いていたが、歌集の栞でお仕事のことを改めて知る(ここには書かないけれど)。読んでいると厳しい場面に驚かされる作品もあるものの、どこか気が抜けたような、あなたまかせにしたいような歌があり、わたしはそこに惹かれる。心の花の百首詠の歌を読むと、短歌が気分転換ではなく、その都度真剣に向きあってられるのもよくわかった。

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