気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ああさようなら

2008-03-01 11:49:27 | きょうの一首
紙袋がさがささせつつ子が春の駅へ走りてああさようなら
(中川佐和子 霧笛橋)

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一読よくわかる歌であり、涙をさそう。
この歌は、『未来』の何月号かで読んだ記憶がある。『未来』はほとんど読んでいないのだが、たまたま友達から借りて読んだとき、強く印象に残った。

上句の紙袋、がさがさとカ行の多い言葉に、乾いていて落ち着きのない不安感が表れている。その後、おそらくもう大人になった作者の子が、春の駅に走っていく。進学か就職で、親元を離れるのだろう。親子の別れの場面だ。ここで時間があって、何か言おうとしても、照れるし適当な言葉が見つかるとも思わない。作者はそれを考えているうちに、子供の方がさっさと駅に走っていく。残った作者は、「ああさようなら」としか言いようがない。

中川佐和子さんには「なぜ銃で兵士が人を撃つのかと子が問う何が起こるのか見よ」という有名な歌がある。この歌が朝日歌壇で評価されたことがきっかけで、短歌に打ち込むようになられたというエピソードを聞いたことがある。このとき質問したお子さんなのだろうか。
上句のリアルさ、「春の駅」の舞台転換、結句の素直な感情の表出。こころに響く歌だ。

逢ひたさはいづれ薄らぐ さうやつて春に幾たび人と別れぬ
(近藤かすみ)


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2 コメント

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Unknown (美子)
2008-03-01 23:43:41
かすみさま こんばんは。お久しぶりです。
ああさようなら の歌 じーんときました。いい歌ですね。
ことばの力にひきこまれてしまいました。
せつない別れのシーンがうまく描写されてますね。

私もいつかこんな場面を体験するのかな なんて・・
娘のためにやっと明日おひなさまを飾る悪い母です。

今日は 春の雪が降りました。
久しぶりに創作モードに入れそうです。 


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Unknown (かすみ)
2008-03-02 09:53:50
美子さま こんにちは。
いよいよ三月になりました。↑の歌、じーんと来るでしょ。
歌集や雑誌を読んで、これは!と思う歌と紹介して行けたらと思っています。
きょうは、これから関西歌会で、大阪に行きます。
夜には、速報をアップ出来るかな?
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